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『話せば、燃える。TAKIGI Talk Live』 レポート Vol.1 大垣ガク氏「共鳴を生むデザイン」

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Vol.1 「共鳴を生むデザイン」
2019年9月26日(木)18:00~20:00

ゲスト:
大垣ガク氏
アシタノシカク株式会社 代表取締役
アートディレクター/空間デザイナー

コーディネーター:
藤脇慎吾氏
有限会社 フジワキデザイン 代表
京都市立芸術大学 非常勤講師

聞き手:
越田英喜
一般財団法人大阪デザインセンター 理事長

勇気をもって、完成させないでおく

「TAKIGI Talk Live」の1回目は、アシタノシカク株式会社 代表取締役で、アートディレクター、空間デザイナーとして活躍中の大垣ガクさんが登場。40名の参加を得て、「共鳴を生むデザイン」と題してお話いただきました。会場は、現役の村野藤吾建築に楽器輸入店を構える丸一商店(大阪・堺筋本町)です。

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左から、大垣さん、藤脇さん、越田

連続講座のスタートに当たり、まず当センター理事長の越田英喜が、イベントタイトルにもなっている「TAKIGI」という言葉にふれながら挨拶。「文明の進化にとって火は非常に大事。皆で燃え上がって、面白いことを持って帰ってもらいたいと思います」。続いてコーディーネーターの藤脇慎吾さんは、「70年大阪万博」「SNSとインターネット」「ロットリング」「テレビ」などをキーワードに、越田理事長の世代(1940年生まれ)、藤脇さんの世代(1963年生まれ)、大垣さんの世代(1976年生まれ)というように、「異なる世代に属している人々をつなぎたい」と抱負を語りました。

デザインの余白が共鳴を生む(大垣)
「藤脇さんからは、これからの大阪を面白くするデザインとは? という大きな玉を投げられたので、それに対して自分なりに考えてみました」と大垣さん。アシタノシカク株式会社について、視覚クリエイティブを核に、ブランディング、広告、空間デザイン、アートなどのあらゆる分野をお団子のように串刺しにし、統合していくインテグレーテッドデザインの会社であると紹介。2015年に関西テレビ放送と取り組んだ「カンテレプロジェクト」を、自主提案からスタートさせたことなどからお話が始まりました。

大垣さんはまず、「デザイン=素材を活かすこと」と定義したうえで、「受け手に共鳴を生むデザインのためには、受け手が参加する余白を作ること」と語りました。また、「作り手と受け手の響き合い」をデザインに織り込んだシンボリックな例をいくつか挙げて説明。中でも、アシタノシカクがシンボルマークを作成した「JTRRD」(大阪・天満)の話題は、このカフェのオーナーが藤脇さんの教え子でもあるということで大いに盛り上がりました。

大垣さんは、「受け手やユーザーに語ってもらい、巻き込んでいくためにも、デザイナーはあえて完成させないという勇気を持たねば」と言います。アシタノシカクのクリエイティブルームには、シンボルマークでもある楕円をかたどった窓があり、その中に人が入って顔を出せるようになっています。また、作戦会議室であり、様々なコラボレーションや企画展示をする場でもある「ASITA_ROOM」も備えています。いずれも変化する場所であるとともに、期待を作る場所。実験・検証を行う場所であり、コラボレーションが生まれる場所。発信する・される場所であり、ストーリーがある・紡がれる場所だと話します。

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共に/偶然/寄り道(大垣)
吉本興業が大阪なんばにオープンした「LAUGH & PEACE GALLERY」の空間やロゴデザインを手がけたのもアシタノシカクです。ここで、「Mr.オクレと60人のアーティスト展」(同ギャラリーで10月11日~31日開催)のために作られたMr.オクレのお面が参加者全員に配られました。

カンテレ開局60周年記念に合わせて作られた、ギャグでボケる 「AIハチエモン」や、「クリエイターが勝手に考える 野生の万博展」(グランフロント大阪・ナレッジプラザで昨年開催)で制作した「EXPO ’25」のシンボルマークについても紹介。大垣さんは、「どうしたら受け手の共鳴や共感が得られるかを、企画やデザインの要と考えている」とのこと。そんな中で、時代のキーワードは「コ・クリエーション 共につくる」「セレンティビティ 良い偶然性」「サーチ≠リサーチ 寄り道の幸」だと話ました。

トップダウンは大阪じゃない(大垣)
「18年間仕事をしている大阪はとても好きな場所。ミナミは明るさや笑いがあるのが特徴だし、誇っていいと思います」と力説する大垣さん。「歴史的にみても権力との距離があること、湾中の湾であって古代から栄えていたことなどから、トップダウンではなく庶民の活気こそが大阪のパワーの源。共鳴を生み出すデザインや活動、その共鳴がさらに共鳴を生む大阪こそが、本来の大阪らしい大阪だと思う」。締めくくりの”焚きつけ”メッセージは、「大阪を一緒に鳴り響かせましょう」でした。

そのあと、参加者全員がMr.オクレのお面をつけて写真撮影するという、即席インスタレーション・タイムに。

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全員がお面をつけ、会場はシュールで不思議な雰囲気に

講演の後は、ディスカッションと質疑応答に入りました。「意味のありようが変わってきて、デザインも提案型になった。提案型でありながら、時代の流れをキャッチしてデザインや形に落とし込めるのが大垣さんの素晴らしさ」と越田理事長。また、「今は、どこで儲けているのかわからない人がクリエイティブだと思う(笑)」とも語り、大垣さんは「デザインについての考え方がすごく大事だと思います」と応えました。

ワンウェイで終わり、ではない万博に(藤脇)

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話題は、来る大阪・関西万博へ。藤脇さんが「EXPO ’70は上から降ってきた」と振り返ると、参加者からは「2025年の万博はパビリオンなどではダメ。では、いったいどう変わるのか? 」という投げかけがありました。大垣さんは「万博に足を運ぶ価値が70年とは違う。行ったら何かがあると思わせないと」。藤脇さんは「1981年のソ連崩壊あたりから人々の物事の捉え方の入口と出口が逆転してきたように思う。例えばデザインメッセージの流れも変わった。メーカーから消費者へではなく、消費者のニーズがメーカーを動かすようになった。しかも答えはひとつではないように、今はワンウェイでフィニッシュできない」。それを受けて大垣さんは、「作り手としての設計はしているけど、余白を作っておくことが大切だと思う。自分たちの仕事も、勇気を持って完成させないようにしています」と語りました。

参加者から大垣さんへの「仕事を受けるか、受けないかはどうやって決めているのですか?」という質問には、「自分が興味を持てるかどうかでしょう」とのこと。「これは大丈夫か? と思っても断りません。でも、本当はこのほうがいいのに…、というのは言います」。カンテレのロゴのときも、読売テレビの開局55年記念ドラマの広告のときも、実際の仕事になる何年も前から「このほうがいい」「こんなことをやりたい」という案を出して相手に投げておいたのだとか。

モノのありように意味がある時代(越田)
越田理事長は、「今までのデザインは問題解決型だった。しかし、世の中が変化して、デザインも何が課題かをみつける、課題発見型になってきた」と指摘。「EXPO ’70の頃はモノが大事だったけど、今はモノ自体よりもモノのありようのほうが意味を持っていますね」

「僕が仕事を始めてからの20年間、2000年あたりから現在までの間でも、ものすごい意識の変遷があったと思う」と大垣さん。「当初はブランディングがハンコを押す感じで機能したけれど、今はもうそうじゃなくなっていますね」

世の中の、ヒトの、仕組みの、変質・変容・変態が日常的に起こる時代。デザイナーの挑戦は続きます。

ゲスト:
大垣ガク氏
アシタノシカク株式会社 代表取締役
アートディレクター/空間デザイナー

コーディネーター:
藤脇慎吾氏
有限会社 フジワキデザイン 代表
京都市立芸術大学 非常勤講師

聞き手:
越田英喜
一般財団法人大阪デザインセンター 理事長

勇気をもって、完成させないでおく

「TAKIGI Talk Live」の1回目は、アシタノシカク株式会社 代表取締役で、アートディレクター、空間デザイナーとして活躍中の大垣ガクさんが登場。40名の参加を得て、「共鳴を生むデザイン」と題してお話いただきました。会場は、現役の村野藤吾建築に楽器輸入店を構える丸一商店(大阪・堺筋本町)です。

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左から、大垣さん、藤脇さん、越田

連続講座のスタートに当たり、まず当センター理事長の越田英喜が、イベントタイトルにもなっている「TAKIGI」という言葉にふれながら挨拶。「文明の進化にとって火は非常に大事。皆で燃え上がって、面白いことを持って帰ってもらいたいと思います」。続いてコーディーネーターの藤脇慎吾さんは、「70年大阪万博」「SNSとインターネット」「ロットリング」「テレビ」などをキーワードに、越田理事長の世代(1940年生まれ)、藤脇さんの世代(1963年生まれ)、大垣さんの世代(1976年生まれ)というように、「異なる世代に属している人々をつなぎたい」と抱負を語りました。

デザインの余白が共鳴を生む(大垣)
「藤脇さんからは、これからの大阪を面白くするデザインとは? という大きな玉を投げられたので、それに対して自分なりに考えてみました」と大垣さん。アシタノシカク株式会社について、視覚クリエイティブを核に、ブランディング、広告、空間デザイン、アートなどのあらゆる分野をお団子のように串刺しにし、統合していくインテグレーテッドデザインの会社であると紹介。2015年に関西テレビ放送と取り組んだ「カンテレプロジェクト」を、自主提案からスタートさせたことなどからお話が始まりました。

大垣さんはまず、「デザイン=素材を活かすこと」と定義したうえで、「受け手に共鳴を生むデザインのためには、受け手が参加する余白を作ること」と語りました。また、「作り手と受け手の響き合い」をデザインに織り込んだシンボリックな例をいくつか挙げて説明。中でも、アシタノシカクがシンボルマークを作成した「JTRRD」(大阪・天満)の話題は、このカフェのオーナーが藤脇さんの教え子でもあるということで大いに盛り上がりました。

大垣さんは、「受け手やユーザーに語ってもらい、巻き込んでいくためにも、デザイナーはあえて完成させないという勇気を持たねば」と言います。アシタノシカクのクリエイティブルームには、シンボルマークでもある楕円をかたどった窓があり、その中に人が入って顔を出せるようになっています。また、作戦会議室であり、様々なコラボレーションや企画展示をする場でもある「ASITA_ROOM」も備えています。いずれも変化する場所であるとともに、期待を作る場所。実験・検証を行う場所であり、コラボレーションが生まれる場所。発信する・される場所であり、ストーリーがある・紡がれる場所だと話します。

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共に/偶然/寄り道(大垣)
吉本興業が大阪なんばにオープンした「LAUGH & PEACE GALLERY」の空間やロゴデザインを手がけたのもアシタノシカクです。ここで、「Mr.オクレと60人のアーティスト展」(同ギャラリーで10月11日~31日開催)のために作られたMr.オクレのお面が参加者全員に配られました。

カンテレ開局60周年記念に合わせて作られた、ギャグでボケる 「AIハチエモン」や、「クリエイターが勝手に考える 野生の万博展」(グランフロント大阪・ナレッジプラザで昨年開催)で制作した「EXPO ’25」のシンボルマークについても紹介。大垣さんは、「どうしたら受け手の共鳴や共感が得られるかを、企画やデザインの要と考えている」とのこと。そんな中で、時代のキーワードは「コ・クリエーション 共につくる」「セレンティビティ 良い偶然性」「サーチ≠リサーチ 寄り道の幸」だと話ました。

トップダウンは大阪じゃない(大垣)
「18年間仕事をしている大阪はとても好きな場所。ミナミは明るさや笑いがあるのが特徴だし、誇っていいと思います」と力説する大垣さん。「歴史的にみても権力との距離があること、湾中の湾であって古代から栄えていたことなどから、トップダウンではなく庶民の活気こそが大阪のパワーの源。共鳴を生み出すデザインや活動、その共鳴がさらに共鳴を生む大阪こそが、本来の大阪らしい大阪だと思う」。締めくくりの”焚きつけ”メッセージは、「大阪を一緒に鳴り響かせましょう」でした。

そのあと、参加者全員がMr.オクレのお面をつけて写真撮影するという、即席インスタレーション・タイムに。

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全員がお面をつけ、会場はシュールで不思議な雰囲気に

講演の後は、ディスカッションと質疑応答に入りました。「意味のありようが変わってきて、デザインも提案型になった。提案型でありながら、時代の流れをキャッチしてデザインや形に落とし込めるのが大垣さんの素晴らしさ」と越田理事長。また、「今は、どこで儲けているのかわからない人がクリエイティブだと思う(笑)」とも語り、大垣さんは「デザインについての考え方がすごく大事だと思います」と応えました。

ワンウェイで終わり、ではない万博に(藤脇)

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話題は、来る大阪・関西万博へ。藤脇さんが「EXPO ’70は上から降ってきた」と振り返ると、参加者からは「2025年の万博はパビリオンなどではダメ。では、いったいどう変わるのか? 」という投げかけがありました。大垣さんは「万博に足を運ぶ価値が70年とは違う。行ったら何かがあると思わせないと」。藤脇さんは「1981年のソ連崩壊あたりから人々の物事の捉え方の入口と出口が逆転してきたように思う。例えばデザインメッセージの流れも変わった。メーカーから消費者へではなく、消費者のニーズがメーカーを動かすようになった。しかも答えはひとつではないように、今はワンウェイでフィニッシュできない」。それを受けて大垣さんは、「作り手としての設計はしているけど、余白を作っておくことが大切だと思う。自分たちの仕事も、勇気を持って完成させないようにしています」と語りました。

参加者から大垣さんへの「仕事を受けるか、受けないかはどうやって決めているのですか?」という質問には、「自分が興味を持てるかどうかでしょう」とのこと。「これは大丈夫か? と思っても断りません。でも、本当はこのほうがいいのに…、というのは言います」。カンテレのロゴのときも、読売テレビの開局55年記念ドラマの広告のときも、実際の仕事になる何年も前から「このほうがいい」「こんなことをやりたい」という案を出して相手に投げておいたのだとか。

モノのありように意味がある時代(越田)
越田理事長は、「今までのデザインは問題解決型だった。しかし、世の中が変化して、デザインも何が課題かをみつける、課題発見型になってきた」と指摘。「EXPO ’70の頃はモノが大事だったけど、今はモノ自体よりもモノのありようのほうが意味を持っていますね」

「僕が仕事を始めてからの20年間、2000年あたりから現在までの間でも、ものすごい意識の変遷があったと思う」と大垣さん。「当初はブランディングがハンコを押す感じで機能したけれど、今はもうそうじゃなくなっていますね」

世の中の、ヒトの、仕組みの、変質・変容・変態が日常的に起こる時代。デザイナーの挑戦は続きます。

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