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【講座レポート】第3回「攻めと守りのブランディング~知的財産権の違いを理解し味方につける~」

2019年12月からスタートした全3回の「攻めと守りのブランディング」講座。20年1月29日の最終講座では、知的財産法の専門家であるレクシア特許法律事務所代表パートナーの山田威一郎さんとINPIT-KANSAI 統括知財戦略エキスパートの川島泰介さんをスピーカー迎え、知的財産権の権利行使の実際や海外進出の際の知財保護活動についてお話しいただきました。

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山田さん(左)と川島さん

実例元に権利の重要性を解説
「デザイン・ブランドの紛争事例から学ぶ権利行使の実務」
レクシア特許法律事務所 代表パートナー 弁理士・弁護士
山田 威一郎 さん

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弁理士・弁護士として数多くの知財紛争を取り扱うレクシア特許法律事務所の山田威一郎さん。知的財産専門の法律家の視点から、意匠や商標を巡る実際の紛争例を紹介し、権利を侵害された場合の対応策や解決へのプロセスをわかりやすく説明しました。

「知的財産の侵害は民事で争われることが多く、訴訟の前に警告書などを送って事前交渉をするのが一般的です。実際に侵害訴訟に発展するケースは日本全国で年間500~600件。そのうち、大阪での訴訟は100件前後です。ちなみに中国では日本の200倍の約10万件以上の訴訟があります」

また、日本の訴訟案件では特許が約30%、不正競争が約20%、商標が約15%、意匠は約4%というデータを紹介し、意匠法の訴訟が少ないのは、原告が意匠権を取得しておらず、やむなく不正競争防止法で戦うケースが少なくないからだと指摘しました。

実際にデザインの模倣被害にあった場合は、まずは意匠権の行使を検討し、意匠権が使えない案件では不正競争防止法の行使を検討するのが妥当とのこと。

「不正競争防止法2条1項3号の”商品形態模倣行為”に当たるのは、発売から3年以内の商品のみ。発売から3年以上経過しているものは不正競争防止法第2条1項1号の”周知商品等表示の混同惹起行為”に該当しないかどうかを検討します。これに該当するのは広く社会に知られている商品。バーバリーのチェック柄などはわかりやすい例ですね。デザインを見ただけで会社名が思い浮かぶような商品が該当します」

また、事前交渉で解決に至らなければ、差し止めや損害賠償を求めて訴訟に持ち込まれることになると説明。実際に裁判所の執行官や執行専門業者、鍵のピッキング業者とともに、侵害品の回収・廃棄のために現場に乗り込んだ実体験を語り、知的財産権の強靭な執行力を印象付けました。

意匠侵害の実例では、意匠法でデザインの類似性が争われた『そうめん流し器事件具』、特許6件と意匠1件で争われた『取鍋試験』を紹介。また、不正競争防止法2条1項3号を行使した『ハンドバッグ形態模倣事件』『スティック加湿器事件』を例に挙げ、意匠法が行使できないときは、不正競争防止法が第一のチョイスになるという具体例を示しました。
不正競争防止法第2条1項1号の行使例には『iMac事件』、今年4月施行の意匠法改正で建築物が含まれるきっかけとなった『コメダ珈琲仮処分事件』などの事例を紹介しました。

商品名やブランド名、ロゴマークなどを保護する商標取得の目的も整理して解説。「他社の類似商標を排除できるという点、商標をきちんと取得することで他社の権利を侵害する恐れがなくなるという点が取得の主な目的なのです」

「商標は先に取得したものに権利が認められる早い者勝ちの権利。実際に訴訟に発展するケースは少ないものの、商標権侵害の警告事件は他の事件よりも多いので、きちんと商標調査を行い、侵害リスクを回避することが大切です」

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海外での知財リスク、契約の重要性
「海外ビジネスと知的財産」
独立行政法人工業所有権情報・研究官
近畿統括本部(INPIT-KANSAI) 統括知財戦略エキスパート
川島 泰介 さん

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企業の知財マンとして長く海外ビジネスに関わった川島さん。その知見、経験をもとに、中堅・中小企業が海外に進出する際に留意すべき知財リスクや国際契約の注意事項を事例とともに説明しました。

まず、INPITは特許庁所管の独立行政法人で中小企業向け知財支援の実施機関であり、大阪のINPIT-KANSAIには川島さんを含め、企業出身の知財マンが4名在籍していると紹介しました。

「ビジネスである限りは儲けてなんぼ。自社の商品やサービスをPRしなくては海外でビジネスができません。しかし、情報管理が甘ければ技術だけを持っていかれる危険もあるのです」

知財を経営資源・ビジネス資産のツールの一つとして考え、取得した権利をどのようにビジネスに活かすのか、また、自分のビジネススキームが知財の目で見て通用するのかなどを、慎重に考慮することが大切だと述べました。

また、海外での展示会へ出品をしていきなり知財権侵害で訴えられるケースや展示会で自社商品について話過ぎて情報が洩れるケース、海外から工場見学に来た視察団に写真撮影を許可したために技術が流出してしまうケースなどに触れ、注意を促しました。

「海外の展示会に出品するということは、海外に進出を考えているということ。そこを他社に狙われ、進出を予定していた国で知財権を先に取得されてしまうこともあります。工場視察などの場合は、立ち入らせてはいけない場所を決めておくなど、日頃から情報管理を行うことが大切です」

さらに日本企業が海外の知財戦略で失敗しがちなケースとして、海外の代理店や販売店に販促ツールや商標出願を任せてしまうことを挙げ、「出願を現地の代理店などに委託した場合、代理店名義で登録されてしまうことがあります。海外で出願をする際は、自身で弁理士に依頼して行うことが重要です」と指摘。 “どの国に、どんな種類の、どんなレベルの権利が、どれほど必要なのか”をしっかり見極めることも大切だと付け加えました。

続いて、技術のライセンスや指導などを行う場合、製造委託をする場合、開発委託や共同開発をする場合など、それぞれのケースに合った注意点と対策を資料とともに説明し、自らのビジネススキームを知財の視点からも見直し、社内の業務フローに知財を組み込むようアドバイスしました。

海外ビジネスの要となる契約書は、トラブルが起きた時だけでなく、通常のビジネスを円滑に進めるためにも、なくてはならないものだと川島さんは考えています。

「中には海外取引でも契約書を交わしていないという企業がありますが、海外というアウェイで戦うためには契約書は必須。海外は日本とルールや商習慣が異なり、働いている人も違います。また、海外は契約に慣れているので、自分に有利な契約を交わすのが上手い。相手の提示した契約書ではなく、自社のひな型を用意して対策を練りましょう」

海外ビジネスで起こりがちな模倣対策に関しては、海外進出に模倣トラブルはつきものとしながらも、知財で戦える人は戦い、知財で戦えない場合は、模倣しにくいモノづくり、模倣に対抗できるモノづくり、模倣を発見しやすいモノづくり、模倣品と区別できる商流など、さまざまな方法で模倣対策を行うよう勧めました。

「模倣品対策には商標のマネジメントが重要。ローマ字だったり、日本語だったり、いろんな商標を使用する会社がありますが、模倣品と区別するためには自社の商標のルールを決め、正しく使用するようにしましょう」

■主催:一般財団法人大阪デザインセンター
■日時:2020年1月29日(水)14:00~16:30
■会場:大阪産業創造館 6階
■参加人数:54名

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