【SEMBAサロン vol.107レポート】「垣根をとびこえた”デザインの考え方”」(志波大輔氏、今村航氏)
今回は、株式会社MERRY BEETLE 代表取締役でアートディレクターの志波大輔さんと、同社チーフデザイナーの今村航さんに、「垣根をとびこえた”デザインの考え方”」というテーマのもと、お話しいただきました。
志波さんは、学生時代は建築家を目指されていましたが、その後、バンタン専門学校に入学中にnendoの存在を知り、卒業後、東京に上京され、nendoに入られました。インテリアを中心に国内外半分づつの案件を手掛けられ、ミラノサローネではインスタレーションなどもデザインされました。その後、2013年に退職、2014年に帰阪し、株式会社MERRY BEETLEを創業されました。
今村さんは、商業系大学を卒業後、サインメーカーに入られ、デザイナーを目指されます。その後、同じくバンタンに入学されてグラフィックデザインを勉強され、インテリア関連会社で施工管理、デザインをされた後で、MERRY BEETLEに入社。現在はチーフデザイナーとして活躍されています。
仕事の役割を簡単に言うと、志波さんが全体をザクっと刈り取って、その後、今村さんが丁寧に刈っていく形ということで、同い年ということもあり、息の合った二人三脚でデザインを手掛けられています。
どういう思いでデザイン?なぜMERRY BEETLE?
MERRY=愉快、楽しい。(日本一楽しく愉快に仕事ができるデザインオフィスに。)
BEETLE=カブトムシ。(幼少期、カブトムシを初めて見た時の感動。)
という考えから、社名をMERRY BEETLEと名づけられたということ。
志波さん「なぜカブトムシかというと、デザインは虫捕りのようなものだと考えている。山の中に分け入って虫を探していくことに似ていて、メンバーとはぐれたり、道に迷ってしまうことも。見つけられるかどうかも分からないが、楽しい。その探求心が原動力になっている。」
デザイン理念は『うつくしいものをつくりたい』。志波さんは、「カブトムシをはじめ、虹色のクワガタなど自然界にあるものに目を向けた時、神様は天才的なデザイナーだと感じる。」とおっしゃっています。今村さんも、同じ気持ちでデザインをされているということで、よくよく周りを見渡してみると、白い紙ひとつとっても、その美しさに気づかされることがあり、自身がなぜデザインを始めたのかを意識するようになったということです。
続く事例紹介では、スキンケア商品のロハコ用パッケージデザインや、化粧品のブランディング、パッケージデザイン、店舗デザイン、家具デザインまで、”垣根をとびこえた”たくさんの事例をご紹介いただく中で、試行錯誤された点をお話しいただきました。
表現したい色を出すためわざわざ海外工場まで足を運び調整されたり、病床家具を手掛けられた際には、これまで木調一択のものしかなかったところ、病気の方やお年寄りの方が力を入れずに簡単に使えるように機能性を出しながら、カラーのファブリックを使用するなど、デザインで病床空間を豊かにされました。こちらの家具は某映画美術スタッフの目に留まり、映画の美術装飾としても採用されたということです。
また、日ごろから”実験的ワーク”として、AIやコンピューターには考えられない、人間にしかできないデザインアウトプットについて考えられていて、どうすれば素材が活かせるか、加工の仕方を考えるなど、あえてアナログで泥臭いことを試されているというお話も印象的でした。
どの事例を聞かせていただいたときにも感じたのは、とことんクライアントに寄り添い、デザインしたものの先にあるものを見つめ、理念とされている”うつくしいものをつくる”ために妥協はされない、ということでした。
MERRY BEETLEさんの事務所では、社名の通り、常にスタッフの笑いが絶えず、和気あいあいとクリエイティブに向かわれているということで、そんなMERRY(楽しい)で、BEETLE(探求心のある)な現場から、これから先もどんな製品が生み出されていくのかが楽しみです。
終了後の懇親会では、個別質問や名刺交換など、MERRYな雰囲気の中で交流いただきました。
【日 時】1月31日(金)19:00~21:00 後半は懇親会
【スピーカー】志波 大輔 氏(株式会社MERRY BEETLE 代表取締役、アートディレクター)
今村 航 氏(株式会社MERRY BEETLE チーフデザイナー)
【参加人数】30名