【SEMBAサロン vol.106レポート】「アメリカにおけるジェントリフィケーション」(山納洋氏)
今回は、大阪ガスの山納洋さんから、「アメリカのジェントリフィケーション」のお話をいただきました。
アメリカ大都市における都市問題、住宅問題という、専門的なテーマにも関わらず、20名以上の出席を得て盛況でした。
大都市の中心部の貧困世帯が住む地域(インナーシティ)が、外部から、中間層、富裕層が流入して来ることによって、地域の居住層、コミュニティが変貌して、従前の居住者が住み続けることができなくなる現象です。
ニューヨーク、ボストン、デトロイト、ニューオーリンズを例にとられ、イギリスや、中国でも大きな問題になっているそうです。
公共投資、民間資本が入らずに衰退していた地域に、冒険的に中間層が進出することがきっかけで、地域の居住環境が改善されていく現象ですが、デベロッパーが地代格差に着目して投機的に介入することによって、大きく社会問題化します。
地域の賃料水準が上昇することによって、地主、家主は収入が増え、行政も税収が増えることになり、中々ストップがかかりません。
人種差別も要因の一つとされますが、ジェントリフィケーションさえ起こらない、貧困、危険なままの地域が多数あるということ、一方で、ハイパー・ジェントリフィケーションとして、世界レベルのエリート層しか購入、居住できないほどに不動産が高騰する現象も起きているそうです。
そういえば、ニューヨークのカルバン・クラインや、バーニーズ・ニューヨークが破綻したことが思い起こされます。実体経済が取り残されているのでしょうか?
参加者から、「流出した人たちが担っていた社会的な役割は誰が果たしているのか?」という質問には、「プエルトリコなどの移民が果たしている」という答えは、大変示唆に富んでいます。トランプ大統領が代表するアメリカが、底辺に抱える複雑な問題が感じられました。
資本の論理だけにゆだねると、人々の生活や文化が棄損されるという点では、場所に関わらない話で、当然、日本でも起こりうるということでした。
京都大学の准教授の方からは、「日本でこれだけ詳細な分析は聞いたことがない」という声がありました。
私たちも、「シティ・デザイン」の意識をもっていきたいと思います。
【日 時】11月1日(金)19:00~21:00 後半は懇親会
【スピーカー】山納 洋 氏(大阪ガス株式会社 近畿圏部 都市魅力研究室長)
【参加人数】24名