「香港BODW2010」視察・交流ミッションを実施して(報告)
(財)大阪デザインセンター(ODC)50周年記念事業の一環として、2010年12月1日(水)~4日(土)の4日間、香港デザインセンター(HKDC)が主催するビジネス・オブ・デザイン・ウィーク(BODW)に坂下理事長を団長とする15名のミッションを派遣し、最新の海外情報の収集と香港デザインセンター・イノセンター(Inno Centre)を訪問・交流しました。
香港デザインセンターとBODW
HKDCは2001年に設立された独立非営利団体で、香港特別行政区政府、香港ジョッキー・クラブの全面的な支援を受け、「デザイナー」という職業の地位向上、事業におけるデザインの戦略的役割の推進、政府や準公共セクターにおけるデザイン思想の醸成、デザインの認知度の向上、アジアにおいて新しいデザイン戦力としての地位向上などを目指し、事業展開されています。
HKDCが主催するBODWは2002年から開催されており、アジア最大の国際コンベンションとして、デザインとブランド、イノベーションを主題に、各国の著名デザイナーやビジネスリーダー、教育者などが一同に会する「デザインフォーラム」とイノベーション・デザイン・テクノロジーをテーマにした国際見本市「IDT EXPO」で構成しており、21世紀のデザインを世界に向けて発信するプラットホームとして、また、中国及びアジア市場へのゲートウェイとして大きな成果を挙げています。2005年はフィンランドやスェーデンなどのスカンジナビア諸国と、2006年はイギリス、2007年はイタリア、2008年はオランダ、2009年はフランスと協業でBODWをこれまで成功させ、2010年はアジアで初めての日本とパートナー国を結んでの開催となりました。
日本では、日本産業デザイン振興会が中心となって、この間、経済産業省やデザイン関連団体とともに「BODW2010準備委員会」を発足させ、準備が進められてきました。
イノセンター
イノセンターは2006年にHKDCと香港科技園によって設立され、デザイナーと企業、政府等が一体となって香港製品のデザイン向上やブランドネームを浸透させる拠点のひとつとなっていますが、ここは香港政府が「クリエイティブ産業の振興に力を入れる」として、スタート時から5年間にわたり1億香港ドルの予算を組んで活動を支援してきました。
香港BODWへのミッション派遣
ODCとしてのミッションは、2010年12月1日(水)午前10時35分に関西空港を出発しましたが、BODWの関連事業がすでに現地では様々に取り組まれており、坂下団長は12月1日朝から深圳で開催されている深圳インダストリアルデザイン協会主催の「Shenzhen Industrial Design Forum」にゲストスピーカーとして招聘されており、「(財)大阪デザインセンターの取組」を報告するため、前日に出発いただきました。また、団員としてご参加いただきました藤本 英子さん(京都市立芸術大学)も11月30日・12月1日と開催されましたDesignEd ASIAカンファレンス2010(デザイン教育アジア会議)【主催:香港理工大学、香港知専設計学院、共催:香港デザインセンター】にゲストスピーカーとして招聘され、先発で香港に行かれ、夜の交流会で合流することとなっていました。
香港貿易発展局の「ブリーフィングと歓迎レセプション」
1日、午後6時から、香港コンベンション&エキビジション・センターで香港貿易発展局(HKTDC)主催の「香港・珠江デルタ地区市場進出支援プログラム ブリ-フィング及び歓迎レセプション」が開催され、HKTDC、経済産業局、日本貿易振興機構(ジェトロ)、日本産業デザイン振興会からそれぞれ挨拶があり、「最新の香港・中国デザイン事情」や「これだけは注意したい商談の心構え」について講演が行われました。
団の結団式・交流会
HKDCとHKTDCから来賓をお招きしての私どもの団の交流会を午後8時からガチョウのローストで有名な鏞記酒家(Yong Kee Restaurant)で開催するため、ブリーフィング途中ではありましたが、失礼させて頂きました。
鏞記酒家には、HKDCからDr.John.Lo様(Senior Consultant of HKDC)とElaine ANN様(committee member of HKDA)、HKTDCから大阪事務所の田中次長様にご参加いただき、それぞれから「香港の現状等」についてご挨拶いただきました。Dr.John.Lo様は大阪にも何度かお見えで、最後に大阪弁で「おおきに!」と挨拶され、場が大変なごみ、その後の懇談に弾みがつきました。香港のデザインとビジネスについて、いろいろお話いただき、2時間の交流会もあっという間に楽しく終え、専用バスで宿舎(リーガル香港ホテル)に戻りました。
挨拶されるDr.John.Lo様(HKDC)
参加者全員で結団式・交流会の記念撮影
会場(香港コンベンション&エキビジション・センター)でのオープニングセレモニー
2日、朝9時前に専用バスで会場(香港コンベンション&エキビジション・センター)に到着し、団ごとに、HKTDCの写真撮影が行われました。そして、9時30分から華々しい演奏の下、IDTExpo/世界中小企業展のオープニングセレモニーが開催されました。
会場の香港コンベンション&エキビジション・センター
オープニングの演奏
会場周辺からビクトリア湾を望む
オープニングセレモニー
「IDTExpo」と「世界中小企業展」の視察
HKTDCの案内で「IDTExpo」の会場と「世界中小企業展」の会場を誘導・案内いただきました。会場はオープン直後にもかかわらず、熱気に溢れた雰囲気で、ブースごとに商談が展開されていました。
トレードホールでは、オリジナリティのある高品質の日本デザインをプロモーションするため、「IDTExpo 日本パビリオン」が出展され、プロダクトデザインや空間デザインから地場産業・伝統産業の分野に至るまで、約50社の出展者が様々な「日本のデザイン」を発信されていました。
「IDTExpo」と「世界中小企業展」の会場風景
日本の「感性価値デザイン展」 「JIDPO:JAPAN DESIGN 2010 」 「The JAGDA Exhibition 2010:Romance」
インスピレーションホールでは、日本の「感性価値デザイン展」「JIDPO:JAPAN DESIGN 2010 」「The JAGDA Exhibition 2010:Romance」も出展され、会場が大変賑わっていました。
「感性価値デザイン展」等の展示会場
ドイツの展示物など
BODWフォーラム
BODWフォーラムでは、この日は深澤直人さんはじめ、日本の著名なデザイナーの方々が招聘されておられ、午前中は開会式と全体会議、午後は3つの分科会で、「ブランド&デザイン」「ファッション&アパレル」「カルチャー&シティ」が議論されていました。
香港デザインセンター・イノセンター訪問
3時に再集合し、HKDCを訪問しました。
HKDCでは、Irene Liさん(Marketing Manager)とAlice Soさん(Assistant Manager)に受入れていただきました。
Irene Liさんから香港デザインセンターがイノセンターの運営を行っている現状について説明をいただきました。「現在イノセンターに80社が入っており、そのうち33社がインキュベーターで、育成・運営している。最初1年は無料で2年間しか借りれない。約300~500スクエアメーター借りる。面積的には50社まで入ることができる。入るに当たっては、ビジネスプラン(企画書)を提示し、面接を行う。入ってからも、3ケ月に一度見直しを行う。この間、何をしてきたのか、何を求めているのか、達成内容が計画書通りでないと退所してもらう。」「2年間で家賃代を含め、1事務所500万香港ドル(約6,000万円)の補助がある。育成・教育するチャンス、計画するチャンス、展示会に行くチャンスでもある。育成カリキュラムについては、香港の人のみではなく日本人でも誰でも入れるが、まだ、あまり知られていない。」「残りは普通のテナントだが、デザイン関連の仕事をしていないと借りられない。現在、ある程度デザインをやってきて、名のある所が入ってきている。」「香港のデザイナーは語学のこともあって、外国に行きたがらない。ビクター・ロー会長(HKDC)は、こうした現状があるので、若いデザイナーを外国に連れて行っている。また、毎年、外国から多くの有名なデザイナーに来てもらって、若い人にスピーチを聴かせている。」など、非常にテキパキとした御上手なご説明とユーモア溢れるジョークに、時間を忘れて、引き込まれました。「是非、今後とも、大阪デザインセンターと交流したい。交流することで、デザイナーの刺激や向上に繋がる。」と、率直にお話いただきました。
イノセンター建物内の景観
Irene Liさん(Marketing Manager)から
イノセンターの説明を受けるミッションメンバー
その後、イノセンターの設備の説明と入居する5社を案内いただきました。
【1】
インキュベーターに入居しているクリエイティブディレクターのRowena GonzalesさんとRowena Gonzalesさんの事務所
【2】
プロダクトデザインの事務所を持つTomas Rosenさんから説明を受けるミッションメンバー
【3】
ディズニーなどのデザインを担当するTomSenga Designのsteven loさん
【4】
図柄を商売とするEYEFIX
【5】
ドバイやインドなどの建物を建築設計するJames Law cybertectureの社長 Brendan McMahonさん
イノセンターでは2時間余り、事務所見学等でお世話になり、最後に参加者一同と案内いただいたIrene Liさんとご一緒に記念撮影。
午後6時30分から香港コンベンション&エキビジション・センター内で開催された「BODW/IDTExpoオープニングカクテルレセプション」にHKTDCからご招待いただき、ほぼ全員で出席し、ワインを飲みながらビクトリア・ハーバーの夜景を楽しみ、その後、ホテルに戻り、有志(参加者全員)で飲茶の店(宿泊ホテルの隣=大変人気のあるお店)での夕食となりました。
3日の日は自由行動ですが、前日同様専用バスで会場(香港コンベンション&エキビジション・センター)に午前9時に到着し、団員の方々は、BODWフォーラムや展示会場、また、BODW併催プログラムとして街中で開催されている「DETOUR」にも、足を運ばれました。今年のメイン会場は古い拘置所跡地で、テーマは「NOT GUILTY」。香港の街に根付くクリエイティブ・ベンチャーを世界に発信する試みとして、香港だけでなくデザイナー達が集まり、現代の多彩なクリエイティブを発見することができる、とされています。
また、BODWフォーラム第2日目は、午前中に全体会議が行われ、日本の原研哉氏や金井 政明氏、喜多俊之氏等のスピーチが行われました。午後からはテーマ別に3つに分かれ、「プロダクト&デザイン」「スペース&デザイン」「ビジネス知財フォーラム」が話し合われました。
BODWフォーラムで講演する
金井 政明氏(株式会社良品計画)
会場内のディスプレイ
お誕生日のケーキを囲んで和気あいあいのメンバー
また、夜は、今回のミッションに事務局として同行いただき、初日の交流会では、HKDCのDr.John.Lo様の英語でのご挨拶を流暢に即時通訳頂いたり、イベント会場での資料やグッズの受け取りなどに英語を駆使し、機転のきいた対応で事務局を大いに助けていただいた寺西章江さん((財)大阪国際経済振興センター)のお誕生日を参加者有志でお祝いすることに前日からなっており、ほぼ参加者全員再集合で、祥正海鮮飯店で大きなシャコエビなどの海鮮料理を堪能しました。
ミッションメンバーからは、寺西さんにお誕生日プレゼントやお祝いのケーキが持ちこまれるなど、最後まで和気あいあいのうちに、最終日の香港の夜を楽しみました。
また、12月3日にアジアデザイン大賞(DFAA)の結果が発表され、日本から次の4作品が選出されました。
・Eneloop Universe(三洋電機株式会社)
・MOKUZAI KAIKAN Wood Wholesalers Association of Tokyo(株式会社日建)
・NEW Krewrap(株式会社クレハ)
・9h〔nine hours〕(Design Studio S)
来年のBODWはドイツをパートナー国として開催が予定されています。
このミッションを通じて、香港がデザインを軸に積極的に国際交流を図ることにより、経済発展している姿を実感しました。そして、「デザインは重要な経営資源」として、ビジネスにしっかりと結び付けています。こうした取組に私たちも改めて学ぶ必要がありそうです。
最後になりましたが、事務局のお手伝いをいただきました寺西章江様((財)大阪国際経済振興センター)、ミッション派遣に関わり準備段階から現地での受入までいろいろご配慮いただきました香港貿易発展局のベンジャミン・ヤウ大阪事務所長様、田中洋三大阪事務所次長様、越賀早苗様、そしてイノセンターの受入や香港デザインセンターとの窓口をお願いしました香港デザインセンター日本担当の高田昭代様に心から厚くお礼申しあげます。