COLUMN

新・デザイン@ランダム

第4回 企業ブランド、商品ブランド、あるいは愛称の認知度について考える

皆様が一度は足を運ばれたことのある大手家電量販店の店頭、液晶テレビを中心とするAV機器をはじめ、
冷蔵庫、洗濯機、厨房機器等の家電商品、カメラ等の光学機器に至るまで多くの商品が所狭しと展示され、
海外からの消費者も含め多くの人で賑わっています。そこには大手家電企業の多様な商品が展示されていますが、
多くの人がなんとなく見過ごされている現象として、企業ブランドと商品ブランド(あるいは愛称)の混在があります。
もちろんユーザーは商品を選ぶのが最終目的ですが、
前提条件としてその商品を生産している企業やブランドに対する信頼度が重要な要素となります。
しかし商品には企業ブランドと商品ブランド(愛称)が混在して表示されており
そのどちらが選択基準の優先順位になるのかは明確ではありません。
ここで参考までに家電大手企業の液晶テレビ商品ブランドを併記すると下記のようになります。(アルファベット順)
HITACHI:WOOO
MITSUBISHI:REAL
PANASONIC:VIERA
SHARP:AQUOS
SONY:BRAVIA
TOSHIBA:REGZA
catalogpic.jpg
そして、この表示は店頭のみならずCMにも同様に混在して表示されているため
ユーザーは商品の購買時点でどちらを優先基準にしているのかよく解らないとしか言えません。
この状況は乗用車にも見られます。TOYOTA:CROWN、NISSAN:CEDRIC、PRINCE SKYLINE等々、
1960年代から始まる日本のモータリゼーションがスタートした時点から企業ブランドと商品ブランドの併記が始まり、
その後、現在でも主力車種であるCOROLLA等をはじめ、軽自動車においてもほどんどの車種においてMOVE、ALTO等々、
ユーザーの認知度においては企業ブランドが優先であり、ベンツ社では基本的にA~Eクラスという形で区別され、
BMW社の場合は3、5、7クラスという形でクラスが明確に表現されているのみであり、
明らかに企業ブランドが優先されていると言えます。
アメリカの場合は、いわゆるBig 3、GM・FORD・CHRYSLERは基本的に企業ブランドが採用されているが、
ただGMの場合は複数の自動車メーカーの連合によって、General Motorsが成立したことにより、
当初のメーカー名 CADILLAC、BUICK、Chevrolet等がそのまま商品ブランドとして使われているため、
実質的には企業ブランドが使われていると言えます。
唯一の例外は、FORDが1964年4月17日、ニューヨークで開催された万国博覧会の初日に
FORDパビリオンの正面に展示されるという異例のデビューを果たし、
その後、初代のT型FORD以来の大ヒット商品となりました。
Ford_Pavilion.jpg
By Doug Coldwell – 自ら撮影, CC 表示-継承 3.0, Link
以上、企業ブランドと商品ブランドの関係について述べてきましたが、
それぞれ企業各社が商品開発の意図、市場展開、宣伝戦略などの条件を検討した結果であり、
結果的にはユーザーによる判断の結果を待つことになるものと考えます。

坂下 清 
(一財)大阪デザインセンター アドバイザー

大阪生まれ。1957年東京芸術大学美術学部図案科卒業。同年早川電気工業(現シャープ(株))入社。さまざまな家電製品のデザインを行う一方、全社CI計画を手がける。
取締役、常務取締役、顧問を経て1997年退任。

Corporate Design Management研究をライフワークとし、大学、関係団体、デザイン研究機関にて活動を継続。

2000年~2012年(一財)大阪デザインセンター理事長。

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