COLUMN

新・デザイン@ランダム

第2回 ピクトグラム/Pictogramについて考える(1)

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ここ2、3年、海外から観光目的で日本を訪れる外国人が1,000万人を超え、2015年には2,000万人に迫る勢いになっています。
その人たちがその操作性、快適性等で高い評価をしているのがトイレットの温水洗浄便座だと言われています。
しかし、一方では操作ボタンが解りにくい、操作方法が解らない、という声が多く挙げられています。
このような状況を受け、今年の1月17日、一般社団法人日本レストルーム工業会が
トイレ操作パネルのピクトグラムの標準化を図ることとなり主要8項目の標準化を進めることとなりました。
観光客の評価が高まり、日本の温水洗浄便座が海外市場に進出すれば、
この新しいピクトグラムの国際的な認知度も高まることが期待されています。
最近、ダボス会議で知られる「世界経済フォーラム」が発表した2017年版の観光競争力ランキングによれば
日本は前回2015年版から4つ順位を上げて過去最高の4位に浮上したと報じています。
交通インフラの利便性が高く評価されたとのことですが、上記の温水洗浄便座に象徴される快適性も含まれているものと考えています。
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さて、日本において本格的にピクトグラムが導入されたのは1964年に日本で開催された東京オリンピックが契機であり、
世界の多くの国から日本を訪れる選手や関係者、そして観客にとって日本は世界でも得意の言語体系を持つ国であることから
円滑なコミュニケーションを図るために組織委員会のアートディレクターであった勝見 勝氏のもと、
言葉を超える伝達機能の確立を目指して多くのデザイナーが知恵を絞り、約40種類の絵文字が開発され
競技種目のみならず空港、交通ターミナル等にも採用され大きな効果を上げることとなりました。
世界の国々、そして多くの民族はそれぞれの歴史的背景から多様な言語を発展させ現代に至っていますが、
基本的にアルファベットに代表される音声によって区別される「表音文字」と
漢字に代表される意味を表現する「表意文字」に大別されます。
漢字の「川、人、木、森」のように言葉が現実の視覚と一致していることはピクトグラムの原点であり、
人類共通の理解を得るためには漢字の視覚表現の理解が有効だと考えられます。
しかし、残念ながら現在の中国は「簡体文字」が採用され、韓国も表音文字であるハングルが主要言語となっていることから、
日本が今後のピクトグラム展開に主要な役割を果たすことを期待されていると考えています。
しかし、最近になってピクトグラムの共通理解について2、3疑義が出ています。
先月の初めにJR大阪駅の中央改札口に案内所が新設されました。
冒頭に提示したように英語の i をシンボルとしたものと我々にはおなじみの ? マークが併記されています。
確かに案内所だから情報が欲しい人が集まり、疑問に応える所では無いと言えますが、
単純にアルファベットの i が記号化されただけでは英語圏以外の人たちにとっては必ずしも適切では無いと考えられます。
また、我々にはおなじみの温泉マークについても海外からの観光客にとっては解りにくいという声があるようです。
詳細の論議は次回に続けたいと思います。
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坂下 清 
(一財)大阪デザインセンター アドバイザー

大阪生まれ。1957年東京芸術大学美術学部図案科卒業。同年早川電気工業(現シャープ(株))入社。さまざまな家電製品のデザインを行う一方、全社CI計画を手がける。
取締役、常務取締役、顧問を経て1997年退任。

Corporate Design Management研究をライフワークとし、大学、関係団体、デザイン研究機関にて活動を継続。

2000年~2012年(一財)大阪デザインセンター理事長。

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