第1回 ”デジタル vs アナログ” デザインの対応について考える
長年に亘って大阪デザインセンターの活動状況を中心に「中小企業のためのデザイン情報」を発信してきた
「DESIGN LINK OSAKA」誌が惜しまれながら平成24年3月発行の55号で休刊されることになりました。
その後、ホームページが情報発信メディアの中心として内容の充実が図られて来ました。
新たな年度に入った機会に「DESIGN LINK OSAKA」誌の巻頭で連載してきた論説を改めて連載することとしました。
新たな舞台ではありますが活字メディアであることは同様であり、
画像も含めて直近のデザインにかかわるテーマを取り上げたいと考えています。
往年の活動期に比べて鉄道を利用する機会は少なくなっていますが最近プラットホームで行き先表示や、
発車時刻を確認したときに気付いたことがあります。
発車時刻が24時間制のデジタル表示になっていること、そして、そのそばには必ずアナログ表示の時計が設置されていることです。
すなわち発車時刻と現在の時間が瞬時に正確に確認できる表示となっています。
そもそも、時刻のデジタル表示が日常的になったのは何時からなのか正確にはわかりませんが
デジタルとアナログ表示の適性を象徴しているものだと考えられます。
私の記憶ではイタリアの空港においてフラップ回転方式による時刻表示が採用されたのが最初であった。
当時は物珍しく、海外のデザイン雑誌でもトピックとして取り上げられていたことを記憶しています。
1969年12月にセイコーから「クオーツアストロン」という世界初のデジタル表示の腕時計が発売され、
デジタル表示が一般的になったと言えます。
私も海外での業務が多くなった時期には各国の時間がワンタッチで瞬間に確認出来ることを評価していました。
しかし、その後はアナログ表示に戻る傾向が強くなっています。
1947年第2次世界大戦終了直後に3極真空管の機能に相当する半導体素子が発明され、1966年にはLSI(集積回路)が発明され、
1943年にロケットの弾道計算を目的に大量の真空管やリレーが使われて開発された巨大なコンピュータ「ENIAC」に代わって
最近に至るデジタルテクノロジーの幕開けとなりました。
コンピュータのみならず1958年には6個のトランジスタを使った世界初のトランジスタラジオが
日本のソニーが開発されデジタルとアナログ技術の融合による新たなテクノロジーの進化が現在に繋がっています。
私がデザインの道を志したのが1949年、表現のために使っていた道具は鉛筆、木炭、筆、ポスターカラー、
水彩絵の具等々典型的なアナログの道具でした。図面はトレーシングペーパーに鉛筆書きコピーは青写真でした。
いま、デザインの最前線では日進月歩のCADシステムによりデザインワークはデジタルテクノロジーにより高密度化し、
技術設計、金型製作、生産技術、そして自動化生産に至るまでデジタルデータによって制御されています。
しかし、使用者である人間は基本的にアナログ特性であることから、今後もヒューマンインターフェースの重要度が増すものと考えられます。
(一財)大阪デザインセンター アドバイザー
大阪生まれ。1957年東京芸術大学美術学部図案科卒業。同年早川電気工業(現シャープ(株))入社。さまざまな家電製品のデザインを行う一方、全社CI計画を手がける。
取締役、常務取締役、顧問を経て1997年退任。
Corporate Design Management研究をライフワークとし、大学、関係団体、デザイン研究機関にて活動を継続。
2000年~2012年(一財)大阪デザインセンター理事長。