グッドデザイン-年間賞-
年間賞
平成16年度年間賞
 
審査講評
平成16年度年間賞選定にあたって
(財)大阪デザインセンター グッドデザイン商品選定
審査委員長 井上斌策(いのうえしんさく)
[(株)トータルデザインシステム 代表取締役]

 長い不況が続いた日本経済に、ようやく回復の兆しが見え始めたことは、産業育成ならびに活性化を願って優秀商品選定事業を進めてきた大阪デザインセンターにとっても大変喜ばしいことです。
 今年度の企業の応募は、過剰な付加価値や機能付けとは一線を画したシンプルで繊細な生活を指向する商品や、ユニバーサルな視点での開発姿勢が多く見受けられました。
 一方で、今や世界的に主流となりつつあるブランド構築での世界戦略といった強いメッセージを持った商品は、残念ながら数少なかったのが現状です。今や国際的にも日本に求められているのは低価格、高付加価値といった側面から、より感性の高いオリジナル性と環境や高齢化への明確な対応、高品質、ハイテクノロジ―を高度に優しく包み込み、使い易い生活へのメッセージを備えたデザインです。こうした中、年間最優秀賞に輝いたのは、暮らしに機器がどう関わるべきかを改めて問い直したシンプルで主張し過ぎないダイキン工業(株)のエアコンであり、年間優秀賞は単にスピーディで簡単便利といった調理発想から、300℃の過熱水蒸気を用いて食品に噴射する全く新しい技術のシャープ(株)のウォーターオーブンと、先端技術を高度に美しい消しゴムサイズのブロックに凝縮した松下電器産業(株)のデジタルオーディオプレーヤーでした。
 また、最後まで優秀賞を競った松下電工(株)の温水洗浄便器や松下電器産業(株)の空気清浄機、この他別で紹介した部門別賞を得た商品も含め、優れたデザインは全て強いエモーションや揺るがないプロダクトコンセプトを有したものでした。それらの中で、年間中小企業優秀賞の長谷川刃物(株)のカスタネットはさみがユニークな発想とユニバーサルな視点で大企業と互角に年間優秀賞を競ったことは本審査に当たって喜ばしいことでした。
 今年度から新たに設けられ、社会性を重視した提案でありその開発や新しい視点に特化した姿勢を評価する特別賞には、(株)大丸ピーコックのエコバッグと競った(株)レーベン販売のUDお玉シリーズが選ばれました。地味な商品にも関わらず着実に優れた企業姿勢を貫いているこの企業は、過去にも部門別最優秀賞を得ており、優れたデザインを生むためには継続した企業努力の積み重ねが重要であることを教えてくれました。
 多くの企業が、今後ともより幅広い真摯な視点でデザインを見つめていただければと願っています。


最優秀賞
商品名: エアコンディショナー UXシリーズ
AN22EUXS(代表機種)
出品者: ダイキン工業株式会社
製造者: ダイキン工業株式会社
デザイン: ダイキン工業株式会社 空調生産本部
デザイングループ
中村 順司
税込価格: オープン価格
エアコンディショナー UXシリーズ AN22EUXS(代表機種)
【選評】 (同部門 副部門長 小山 格平 = 京都市立芸術大学 美術学部 デザイン科 教授)
 建築雑誌に掲載されている新築のインテリア空間等を見ていると、とても人が住んでいそうにない、生活臭のないスペースがそこにある。そしてもう少し注意深く観察すると、壁にエアコンがない場合が多い。おそらく取り付ける前に撮影されたものだろう。壁掛けタイプのエアコンは、インテリアのノイズとなり、建築家には嫌われモノのようだ。逆に言えば建築家が好むようなデザインがなかったということになる。ダイキンエアコン UXシリーズは、その様な建築家の要望を満たすだけではなく、使用者の要求も十分に満足させるモノである。エアコンの室内機は、コンパクトで薄型へと向かっている時期があったが、時代の要請が省エネへと向かい、その為に室内へ出っ張る形状となったようだ。今回のシリーズでは吸込口と吹出口が自動的に開閉する構造になっており、その為ONとOFFで形状が大きく変化する。フロントパネルの素材、表面処理にも新規性を取り入れ、級感を演出している。このエアコンの素晴らしいところは、コンパクトと薄型、そして省エネを実現し且つ従来のエアコンのイメージを払拭した事であり、そのことが高く評価された。
優秀賞
商品名: ウォーターオーブン ヘルシオ
AX-HC1-S/R
出品者: シャープ株式会社
製造者: シャープ株式会社
電化システム事業本部
デザイン: シャープ株式会社
電化システム事業本部デザインセンター
税込価格: \126,000
ウォーターオーブン ヘルシオ AX-HC1-S/R
 
【選評】 (同部門 審査委員 加藤 周三 = 株式会社NECデザイン 取締役)
 本製品が市場に出てきたとき、「これは何!」と感じた記憶があります。1987年に「電子レンジWith2」というドーム型のデザインで衝撃を与えたメーカーらしい意欲的なデザインを評価しました。キッチン家電の領域で私の心を動かす衝撃的な製品は、なかなか見ることが出来ません。最近では住宅事情も様変わりしている中で、「デザイン」で勝負といった製品が無いのは不思議でした。「ウォーターオーブン」という新しい機能を持った調理機器をデザイン品質ならびに完成度の高いデザインにまとめあげた総合力が評価されました。
 ドアを開けると、操作パネルの反対側に水タンクがあり、左右対称の形態が生まれたとのことです。部品のレイアウトを絶妙に利用して、新しいデザインを生み出すことが出来たのでしょう。審査の過程で「シルバーは業務用のデザインでは?」という意見もありました。それだけしっかりした造りがそのような印象をもたれたのではないかと思います。特に全体の40%が「レッド」を購入していることは、色を上手に使い出した消費者の傾向が如実に現れていると考えられます。

優秀賞
商品名: デジタルオーディオプレーヤー
SV-MP500V/510V
出品者: 松下電器産業株式会社
製造者: 松下電器産業株式会社
パナソニック AVC ネットワークス社
デザイン: 松下電器産業株式会社
パナソニックデザイン社
AVCネットワークデザイングループ
パーソナルネットワークチーム
矢木 良一
税込価格: オープン価格
デジタルオーディオプレーヤー SV-MP500V/510V
【選評】 (審査委員長 井上 斌策 = 株式会社トータルデザインシステム 代表取締役)
 一見ナンダ?と思わせる。未来を拓く開発にとってコンセプトが如何に重要であるかを明確に示したこの商品にデザインの重要性を改めて認識させられた。
22mm×70mm×13.9mmのブロックにFMチューナーとICレコーダー機能を搭載し、MP3圧縮によって60曲(256MB)の音楽が楽しめる。「表示ブロック」と「操作ブロック」をシンプルに分離構成し、アルミニュームキャビとラバー上の塗装の継ぎ目が無いレリーフ状操作ボタンは、小型化と高性能化&高い操作性といった矛盾点をうまく両立させている。アクセサリー感覚でしかもポケットの中でも容易に操作し易い設計は小型化の進むメモリーオーディオの中に於いても際だった個性を創りあげている。しかも難易度の高いビス・レス加工、モーター等の駆動部レス、大型4行表示のELバックライト付きLCD搭載で表示も見易い。装飾過多の多いデザイン市場にあって、究極の機能とインターフェース要素を高度な技術でシンプルにまとめ上げたコンセプトから製品化迄の一貫したデザインプロセスが見事に凝縮されている。
 PCスキルの豊富になった若いユーザーのみならず、音楽好きの幅広いユーザーにも答えられるユニバーサルな視点にも好感が持てた。モノが進化し便利になるに従って人間はバカになると言われるが、高い技術を内包しつつもソフトにさり気なくパッケージされた音世界を、手の中で自由に遊泳出来る知恵に進化させた人間の創造力を高く評価したい。使うといった以前に、手に取ってみたい!意味無く所有したい!といった、心を豊かに満たす直感的要素はモノの機能・性能をはるかに超える大切な要素で有ろう。新しい視点でデザインの未来を拓いた開発陣にエールを送りたい。
中小企業優秀賞
商品名: カスタネットはさみ
CA-110シリーズ
出品者: 長谷川刃物株式会社
デザイン: トライポッド・デザイン株式会社
中川 聰
小売価格: 樹脂ハンドルタイプ \1,575(税込価格)
銘木ハンドルタイプ \10,500(税込価格)
カスタネットはさみ CA-110シリーズ
【選評】 (同部門 審査委員 古川 美智子 = 有限会社エリプスデザイン 取締役)
 今の子供達から「自分の手で作る」楽しさを体験するチャンスを奪っているのは大人かも知れない。
「切る道具」であるはさみも大人の目から見ると子供の小さな手で扱う様子は確かに危なかしい。このはさみは小さな手、握力の弱い手でも安全に使え、利き手も規制しないユニバーサルデザイン。構造は和はさみに近い、「握る」と「開く」という動作で切る。その時に2つのハンドルが互いに接触して名前の通りカスタネットのように軽快な音のリズムを刻む。切る行為の面白さ楽しさを加速させる。刃には付けはずし可能なカバーが付いていて、付けたままで切る事もできる安全設計。
樹脂のハンドルは5色。銘木ハンドルと言うのもあって音色が違う。樹脂も色によって音色が違うとどうだろう?と使うシーンを想像する。
特別賞「プロダクトアイデンティティ賞」
商品名: ののじ UDお玉シリーズ
(※UD=ユニバーサルデザイン)
ののじ UDお玉 80cc LB-FSU001
ののじ UDお玉 120cc LB-FSU011
ののじ UD歯付お玉 80cc LB-FSU020
ののじ UD歯付お玉 120cc LB-FSU030
出品者: 株式会社レーベン販売
製造者: 業株式会社レーベン販売
パナソニック AVC ネットワークス社
デザイン: 株式会社レーベン販売
部 篤
税込価格: ののじUDお玉 80cc \2,730
ののじUDお玉 120cc \2,940
ののじUD歯付お玉 80cc \3,360
ののじUD歯付お玉 120cc \4,200
ののじ UDお玉シリーズ
【選評】(同部門 審査委員 河野 登 = ミズノ株式会社 商品開発部デザイン室 上級専任職)
 平成15年度に当デザインセンターが、年間優秀賞に選定した「ののじ調理用具シリーズ」は、大量調理施設で大人が使うモノであったが、今回は調理された給食を食器に注ぐ時、子供が使うモノを新シリーズで開発、連続の応募であった。
給食施設での徹底した衛生管理、環境ホルモン問題、高温消毒保管に応えるステンレス製の洗浄しやすい一体構造や、業務用調理に必要な条件は前作同様に備えている。
学校給食時の子供たちが、慣れない手つき、おぼつかない動作で、底の深い食缶から汁や麺類をすくう行為を、愛情ある目で観察し直し、従来品より、より自然で安全に、しかも素早くできるように改良されている。ユニバーサルデザインに真摯に取り組み、新しい造形の杓子を生み出した。特に「歯付きお玉」は椀部に歯が出て麺などもすくうことができる機能美デザイン。ハンドル部の中空部は、軽量化と子供の手でも握りやすく力を伝えやすい形「エッグシェル」になっており、すくい上げ時の縦動作がし易い。深さのある縦型容器にマッチした長さ、使用時のバランスなども良く、清潔感あるミラー仕上げも美しく子供たちが楽しげに給仕する光景が浮かんでくる。
今回、(株)レーベン販売は、他のシリーズ(手元調理器具)も選定されており、ラインアップ充実への開発意欲が見られる。使用者の観察から始まり、既成概念を払拭し、保有技術で製品化、試しては改良する企業姿勢は、製品デザインの質的向上にも反映してきている。
平成15年度受賞
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