グッドデザイン-年間賞-
年間賞
平成15年度年間賞
 
審査講評
平成15年度年間賞選定にあたって
(財)大阪デザインセンター グッドデザイン商品選定
審査委員長 兼 工業デザイン部門 部門長 井上斌策
[(株)トータルデザインシステム 代表取締役]
 平成15年は、近年問われつつも、出口を見つけ出せないままの試行錯誤を繰り返し続けた「デザイン」を取り巻く環境変化やグローバリゼーションへの対応、ローカルやトラデイッショナルアイデンティティへの再確認等々の様々な問題に対する解答が顕著に表れ始めた年であった。こうした背景にはパラダイム変化も大きな要因となっている。「ハードからソフトへ」「耐久性・機能性といった品質から人々の感動を呼び起こす価値・感性としての品質へ」「オブジェクトからコンテンツへ」「やっと腰を上げた我が国のブランド確立戦略を柱とするデザイン政策ルネッサンス」等々であり、いみじくも今年度の優秀賞に選ばれた品々は、これらを先取りし具体化提言を行なった企業のものであった。
 かつてのマーケット対応調査に基づいて市場ニーズを探るといった、横並び発想から「自らの時代予見に基づく一貫性を持った明解な創造力を打ち出す仮説構築力」が問われてきたことはもはや疑う余地が無い。デザインの先進性を支えるものは単に新しいプランやスタイルを施すといった、記号論的な発想では無く、潜在している意識の再発掘であったり、サスティナビリティ的視点であったり、明確なアイデンティティに基づくカルチュアーとしての取り組みも求められている。

 住・生活環境での月間賞に推された、LED電池式スタンド(松下電工)、カサキーパー(イデア)、ユニバーサル多用深皿(デザインモリコネクション)等は、すべて日常の当たり前の快適さとは、に真摯に取り組んだ成果であり、工業部門でのコードレスクリーナー(東芝)、クリーナー(三洋電機)、デジタルカメラ(松下電器産業)、軽乗用自動車(ダイハツ工業)等々もいかに市場的優位をメッセージ出来るかといったデザイン戦略以前に、ユーザーが気付かなかった「納得」を専門的な研究視点で具体化しょうと試みた姿勢が成果に表れている。
 特に年間最優秀賞に輝いたドラム式乾燥洗濯機(松下電器産業)は、高度な技術的要素やメッセージをあえて表に出さない優しいフォルムでのユニバーサルな視点に加え、安全性、設置に伴う配慮は当然の事ながら、家事に関わる当事者とその家族の生活ストーリーを思い浮かべさせ、これからの生活シーンのありかたを示している。

 こうした地味な日常性とは別に フロアスタンドスクリーン(ホームシアター)は、最後まで年間最優秀を競った優れものである。生活の中に浸透しはじめたコミュニケーションギアやアミューズメント要素に対応したプロジェクター用スクリーンは、従来の脇役から、ファインインテリアとしての存在を充分に感じさせ、仕上げ、機能、品格を備え、強烈に所有したい感性的品質をアピールし、年間優秀賞を得た。

 同じく年間優秀賞を得た、ののじ調理用具(レーベン販売)は業務用としての究極の無駄を省いた機能美を実現しつつ、オールステンレス一体構造といった従来の画一的金属道具イメージとは全く異なった、品と美しさを打ち出し、使う程に手放せない匠の風格すら感じさせる。

 一方、設備や開発力に勝る大手メーカーとは異なり、限られた規模の中で新たな開発に力を注ぐ中小企業の中に、大手をしのぐ優秀な商品を打ち出す企業が年々増えて来た事に審査員一同大きな喜びをを持っている。この事は、資金や人数といった背景でなく、先に記した「自らの時代予見に基づく一貫性を持った明解な創造力を打ち出す仮説構築力」を持つ強い「意思と思い」がこれからの開発にとって何にも増して重要である事を示している。月間賞を得ている(山本光学)のスキーレーシングヘルメットはプロフェッショナルに徹しきった妥協の無さで、世界ブランドを築いているし、(桑原インターナショナル)のスモールホイールバイクはエレクトロニクスリードの時代にあってメカニックな構造美と使い手の共感に真っ向から立ち向かっている。

 今回の選定に立ち会った委員各氏の中での共通認識は、改めて「グッドデザインとは」を問い直す原点への回帰の必要性であった。近隣のアジア諸国のデザイン振興は政財上げての著しい成果を上げつつある。大阪デザインセンターの選定事業の主目的は優秀商品を選定する事で無く、多くの知財蓄積を擁したこの国のノウハウをデザインというソフトを活用して、如何に未来に活かすかの啓発活動やバックアップ寄与にあると考えている。優秀商品開発に先立って、新しい「デザインの必要性」の裾野を広げ開拓して行く事が如何に重要であるかを、理解して頂けるよう真摯に努力し続けることこそが、私達に課せられた最大の使命と痛感している。

商品名: ドラム式洗濯乾燥機 NA-V80
出品者: 松下電器産業株式会社
製造者: 松下電器産業株式会社
デザイン: 松下電器産業株式会社
パナソニックデザイン社
ナショナルデザイングループ
ホームケアシステムチーム 
津田 幸裕 ・ 小林 優
税込価格: オープン価格
ドラム式洗濯乾燥機 NA-V80
【選評】 (工業デザイン部門 審査委員 加藤 公敬 = 富士通(株) 総合デザインセンター センター長)
 これまで国内では「縦型」と「横型」の二つタイプの洗濯機があった。長く国内では縦型洗濯機が主流を占め、二槽式を経て全自動タイプとなり、上部に乾燥機を併設するタイプが一般的となり乾燥一体の現在型となった。海外やコインランドリーでよく見かける横型洗濯機は洗濯と乾燥が同じドラムで可能なタイプが一般的で、海外製品のOEM製品から普及を始め、最近は国内でも製品化されるなど利用が伸びていると認識している。
 本商品の特徴は、縦横双方の利点を生かし「ななめ30°ドラム」方式が採用され、利用者にとって更なる利点を生み出している。まず、「ななめ30°」は、洗濯物の出し入れやドラム奥の洗濯物にも手が届きやすく、大きい透明ドアも相俟って、とにかくよく見えるし楽に作業ができる。上部フラット面には洗濯カゴなどが置け、大型スイッチの採用や操作フローに合わせて配置された操作部、光の色と量で動作状況を表現する表示部等、見るからに ・ ・ ・ 、である。さらに、ドラムのななめ効果で洗濯時の水の必要量も少なくて済むそうである。

 また、カラーバリエーションもドラムカバーの輪郭部のみの2色(種類)である。全体としておしゃれにまとめられており、いろいろな人が使いやすいなどのユニバーサルデザインと節水 ・ 省エネ効果が期待できるエコデザインを見事に両立できている訳である。

 こんな洗濯乾燥機があれば、を見事に実現し、判りやすいそれらしいデザインがされており、人や地球への配慮など企業の社会責任など社会性も十分発信されている。デザインの可能性を追求、実現された手ごたえのあるすばらしい商品である。我が家の洗濯乾燥機も買い換えたくなる誘惑に駆られそうである。
商品名: フロアスタンドスクリーン 
キャリアビジョン BS-80
出品者: 株式会社ホームシアター
デザイン: 林 清文
税込価格: \84,000
フロアスタンドスクリーンキャリアビジョン BS-80
 
【選評】 (住・生活環境デザイン部門 審査委員 福田 民郎 = 京都工芸繊維大学 教授)
 この商品の最大の長所は、自立型でスクリーンの平面性も良く、映像の再現性も良好であることといえる。全体の外観やデザイン処理もクリーンな印象があり、良好である。

 また、実際の安定感も問題がない。使用性も良い。円滑にスクリーンを引き出すことが出来、しかもフリーストップでプロジェクターや部屋の状況にあわせることが可能なことは優れている。そして、 自立している形が無駄な装飾や構造物が見えず、「スクリーンだけがすっと立っている」というライトな感じで全体的に上品な雰囲気を持っている。

 回転式のシャッターを採用しており、収納時は円筒形に収まり、シンプルな形状にまとめられている。またハンドル部も回転して本体にうまく収めている。専用フック棒とその収納、ハンドルとその収納、エンドカバーの処理、脚部の回転収納など細部の仕上げも良好で、形と機能のバランスも取れており高く評価できる。

 しいて難点を挙げれば、脚の色と重量である。 脚の色がブルーであることの必然性が弱く、やや本体とのカラーマッチングという点で残念である。また、少し重く、男性が一人で運ぶことが出来る限界の重量(11.5kg)と思われる。

 次期商品として材質や機構に工夫がなされて、さらに軽量になることを期待したい。

商品名: ののじ調理用具シリーズ
調理用ビッグターナ(小) BTN-001
調理用ビッグターナ(中) BTN-002
調理用ビッグターナ(大) BTN-003
調理用ビッグフォーク BFK-002
調理用ビッグ三角ターナ BTN-302
調理用掬いカゴ BKA-002
出品者: 株式会社レーベン販売
デザイン: 高部 篤
税込価格: 調理用ビッグターナ(小)/(中)/(大)
\23,100/\26,250/ \29,400
調理用ビッグフォーク \26,250
調理用ビッグ三角ターナ \26,250
調理用掬いカゴ \26,250
ののじ調理用具シリーズ
【選評】 (住・生活環境デザイン部門 副部門長 浪越 ひろみ = 羽馬屋意匠プロダクトデザイン 代表者)
 機能美というのは、こういう製品の為にこそあるのかも知れない。
 余計な装飾は施さない。しかし、必要とされる目的のため、細心の注意を払って形状を創り上げた結果が「美しさ」として、この製品に宿っている。

 ある意味、業務用であるからこそ成し得た形状とも言えるそれは、最高の性能を求めて進化していった戦闘機やF-1マシンの美しさに通じるものがあるようにも感じる。

 もちろん業務用の調理具であるこれらの製品を使い100リットルを超える大なべ料理を扱う大変さは、家族相手の家庭料理しかしたことのない私に、容易に想像することは難しい。しかし、安全性や衛生面、作業性に求められる基本的な要求が家庭用調理具の比ではないことは明らかだ。

 この製品がとても魅力的に感じられるのは、そういった基本的な問題に対する真摯な取組みがひしひしと伝わってくるからだ。
 その対応策は、とても地道で丁寧だ。洗いにくく汚れの残りやすい柄との継目は、完全に密封され、軽くする為中空になった楕円形の柄は持ち手側の先端も封鎖されている。
 カゴアミにいたってはアミでありながらアミでない。つまり編みこんだワイヤーを使わず、太めのワイヤーの交点をすべて溶接してメッシュを構成しているのだ。手間もコストもかかるであろう方法だが、衛生面とメンテナンス性の向上のためあえてこういった方法をとっている。

 また、目的から出発し、既成概念を取り払うという姿勢がヘラに現れている。
 通常、ヘラと言えば板状であるということになんの疑いも持たないが、この製品はループ状にしたワイヤーに答を見出している。

 ともすれば、スタイリング優先になりがちになる最近のモノ創りの風潮であるが、大げさかも知れないが、工業デザインの原点を見た気がした。

 選考会では、商品そのものもさることながらデザインに対する企業姿勢も各委員から高い評価を受け、年間優秀賞の決定となった。「食」に対する安全性が広く問われている今日、今後の商品開発が楽しみな企業である。
平成14年度受賞
    選定商品一覧へもどる