ケーススタディ

2011.12.02

デザインアワードから広がるデザインの可能性

コクヨ株式会社 本社統括部広報グループ下野 由美子氏

■「ユニバーサルデザイン」から

コクヨのデザインアワードがスタートしたのは2002年。その時期、社内ではユニバーサルデザインに取り組み始めて数年が過ぎた頃でしたが、社会的にはまだユニバーサルデザインが普及していなかった時代でしたので、第1回目のアワードのテーマを「ユニバーサルデザイン」として募集致しました。
当時の応募作品は約300点。ユニバーサルデザインの有識者、プロダクトデザイナー、グラフィックデザイナー、建築家を審査員としてお招きし、当社の社員とともに審査いたしました。応募者は美大生、プロデザイナー、子供からお年寄りまで幅広く、それぞれの立場や使用シーンにあったユニークなアイデアが寄せられました。

これも、日頃から世代に関係なく当社の商品をご愛用くださっているお陰だと思います。また応募していただく方々にとって、自分のアイデアを商品化してくれるこのコンペティションをより身近に感じてくださっているのかもしれません。
これまでのテーマは「ユニバーサルデザイン」以外に、「仕事が楽しくなるデザイン」「奥行き」「素」「融通のきくもの」「炭素」「よりどころ」といった、その時々の世の中を象徴するキーワードを設定しております。テーマを通し、デザインの可能性を応募者の皆さんと一緒に考える、貴重な機会にもしております。

■受賞作品の商品化

受賞作品がそのまま商品化される例は少なく、完成度の高い作品であっても当社の開発プロセスによって丁寧に検討されます。生産面・技術面・コスト面など、量産化するにあたってクリアすべき課題を一つ一つ確認し、最終的に商品化会議を通過した作品が、晴れてアワード商品として誕生します。
アワード商品の中でも最も認知度が高いのは「カドケシ」で、アワード商品の第一号です。
それまで消しゴム=矩形、消しやすいものが一番という固定概念を誰もが疑わなかったため、角を消すことの心地よさに着目した凹凸のある消しゴムの発想は私たちにとっても新鮮でした。しかし、従来であれば押し出し成型で簡単に量産できるものが、凹凸により射出成型でコストの高い成型方法をとらざるを得なかったため、社内で商品化することは賛否両論でした。通常3ヶ月の開発期間は1年を要し、はじめは一度に4個しか作れない金型からスタートしたと言えば状況をお分かりいただけるでしょうか。
しかし、この「カドケシ」は発売後たちまち大ヒット商品となり、一年で100万個を突破しました。今ではニューヨークの近代美術館(MOMA)のパーマネントコレクションにも認定され、海外でも認められる商品に成長しています。
その他、「パラクルノ(ノート)」もグッドデザイン賞金賞を受賞し、「Beetle Tip(蛍光ペン)」も女子学生を中心に人気を博しています。このようにアワードを通じてデザインの可能性が広がり、お客様に支持される商品が誕生するようになりました。

■より具体的な商材に近づけるために

そのデザインアワードも8回目を終えた時点で一旦休止し、テーマのあり方や商品化のプロセスの見直しを図りました。そして、9回目となる今年はテーマをより具体的な商材に近づけて、「Campus=学びのデザイン」に設定し、学びをサポートする新しいツールを募集しております。このテーマには、当社がCampusを「学びを支援する」ためのブランドとして再定義し、ノートから文具、家具や空間にまで展開していきたいというメッセージでもあります。
今年のデザインアワードもただ今最終審査の段階ですが、ご応募いただいた方、審査員を務めていただいているクリエイターの方、そして開発者である当社の三者が、お互いに刺激し合いながらプロダクトデザインの新たな価値の創出を狙っております。

コクヨ株式会社 本社統括部広報グループ 下野 由美子氏
オフィス家具設計、新規事業立上を経験しながら、現在コーポレートブランディング&デザインアワードを担当している。
http://www.kokuyo.co.jp/award