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2011.08.05

機能性とデザイン性の融合によるブランドづくり

長谷川工業株式会社 マーケティング本部長長谷川 義高氏

「安全性の上にデザインをうまく成立させることです」

はしご・脚立・高所作業台のリーディングカンパニーとして、独自の技術と発想で、安全性にこだわった製品を生み出してきた長谷川工業株式会社(大阪市西区)。新たにデザインを経営資源として取り組まれている同社・長谷川義高常務取締役 マーケティング本部長に、商品開発における思いについてお話をうかがいました。

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あらゆる空間に溶け込む控えめな存在感の「クロコ」

■まずは事業内容についてお聞かせください。

今年で創業55年を迎えます。商品は脚立・はしごが中心ですが、あらゆる業種のさまざまな現場に応える安全で高品質なモノづくりに取り組み、『脚立なら"ハセガワ"が一番安心できる』というブランドとしての信頼感を長年培ってきました。最近では、業界において他社の品質も上がり海外製品も台頭するなどして、価格競争に陥っている状況です。そこで55年という節目に際し、創業時の精神をはじめ安全面などの品質管理にこだわってきた歴史を振り返るべく社員向けDVDを制作。社内の共通意識を高めつつ、お客様に向き合っています。 約4年前にマーケティング本部を設立し、社名ロゴも一新しました。大きな目標は「売れ続ける仕組みづくり」が大前提でした。究極は、営業マンがいなくても売れる商品。いわば"行列のできるはしご屋さん"のようなイメージです。お客様から引き合いがドンドンと来る魅力的な商品をつくりたかったのです。安全・安心な商品でありながら、さらに高品質で付加価値の高い商品づくりを目指すためには、機能性とデザイン性が必要不可欠だと痛感しました。

■製品にデザインを取り入れたきっかけについてお教えください。

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カラーアルマイト処理を施したブロンズカラーの「マロン」

最初は小さなことがきっかけでした。商品撮影でたまたま訪れたスタジオにある三脚などの機材は、反射や映り込みを避けるためにほとんどが黒でした。ところが脚立だけはシルバーのままで、撮影に支障がないようにわざわざ黒い布を被せて使用する必要がありました。そこで「いっそのこと、黒い脚立があれば」と考えたのです。脚立はシルバー色という既成概念を変えたことで、写真関係だけでなく思わぬところからも引き合いがありました。やむを得ずお客様の前で電球交換などの作業をしなければならない時に、シルバーより黒の脚立のほうが目立たなくていいという、ホテルやデパートからの注文だったのです。こうして、文字通り「クロコ」は定番商品となりました。その後、世界的に有名なブランドショップに勤める友人の声をヒントに誕生した踏み台「マロン」も、カラー脚立のひとつでした。店の雰囲気を損なわないために、シルバーではなく高級感のある茶色を提案したことが功を奏した結果でした。こうして、"脚立=シルバー"という既成概念から脱却することで、新しい商品を生み出すことができチャンスも広がりました。

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「レッドドットデザイン賞 ベスト・オブ・ザ・ベスト2010」を受賞した、ムラタ・チアキ(メタフィス)デザインの「ルカーノ」、外観に固定のネジを出さない設計で、折りたたみ時も自立可能。
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グッドデザイン賞 中小企業庁長官賞を受賞した「ルカーノ スリーステップ」

■デザイン開発をどのように推進されていますか。

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女性や高齢者の方でも握りやすいユニバーサルフレームを採用した「フィットステップ」はグッドデザイン賞を受賞。
デザインはデプロ・インターナショナル・アソシエイツ(デザインビジネスプロモーションセンターの紹介でマッチング)
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喜多俊之デザインの「ハンドルステップ」、片手ハンドル付きで上がりやすい新しい踏台は今夏発売開始予定

商品コンセプトに沿ったディテールからデザインを導き出し、単にカラーリングだけではない高付加価値の商品化を目指すべきだと考え、デザイナーとの取り組みを進めるにあたり出会ったのが、ムラタ・チアキさんでした。曰く、『中小企業に足りないものは、ブランドとチャネルだ』と。確かに"ハセガワ"という名前は職人業界では知られていますが、インテリア業界では知名度もなくチャネルもありません。デザイナーのいない弊社にとって大きな冒険ではありましたが、メタフィスと連携を図って商品化した「ルカーノ」は国内外で高い評価をいただくと同時に、懸念であった販売チャネルの強化を図ることもできました。踏台や脚立・はしごが一家にほぼ一台あるというマーケティングデータからも一般家庭でも相当需要があると確信。実用的でさらにセンスがいいモノを求められるニーズの中で、インテリア業界のマーケットも広がってきました。 しかしながらデザイナーとの取り組みも大切ですが、やはり55年のノウハウがある当社の安全性に対する信頼の上にデザインをうまく成立させることが何より大切だと思っています。引き続き、「フィットステップ」「ハンドルステップ」を優れた外部デザイナーと製品開発を進めて商品化するとともに、今年度初めてデザイン系大学の新卒をデザイナーとして1名採用するなどして、新たな試みにも取り組んでいます。 私自身も既存の概念にとらわれず、常に日常色々なシーンで、自社の商品やサービス、プロモーションに役立つアイデアや企画を考察しています。そしてこれからも、当社の製品によって使う人の暮らしをステップアップできるような、お客様の高い満足に応える"ハセガワブランド"を確立していきたいと思います。

長谷川工業株式会社 常務取締役 マーケティング本部長 長谷川 義高氏
1969年兵庫県西宮市生まれ。トステム㈱を経て、2005年に長谷川工業株式会社に入社。
営業本部長を経て2007年にマーケティング本部を創設し本部長就任。取締役を経て2010年常務取締役。経営戦略にデザインの価値を取り入れ歴史に残る製品づくりをめざす。
趣味はゴルフ、書画など。