ケーススタディ

2011.03.30

大阪発世界に販売、デザイナーが社長の生活雑貨メーカー

イデア株式会社 代表取締役/デザイナー羽場 一郎

■第二期創業

創業は1989年羽場企画事務所。商品開発のコンサルティングを受託し併せてデザイン提供する事業を始めました。顧客は大手紡績メーカー、自動車メーカーから中小のメーカーさんなどの新製品の開発の相談に乗り具体的な製品デザイン、商品化をディレクションしていく業務を請け負っていました。
自分が企画デザインをお手伝いしたものが、成功する自信があっても失敗に終わるものが多々ある、なぜ成功を収めきれないのか? 企画が悪い? デザインが悪い? コストが高すぎ? 営業が動いてくれない? 売り方が悪い? 宣伝販促が悪い? 事業の仕組みそのものができていない? 商品の成功は企画やデザインだけじゃない、つまるところすべては経営判断による、そう考えるようになっていきました。売った事のないアイデアやデザインは売れるかどうかわからないから商品化に乗り出せない、そんな声を聞く事も度々でした。じゃあ、自分自身の手で企画デザインから生産、品質管理、在庫管理、物流、営業、宣伝販促、回収まですべてやってやろうじゃないか。それなら失敗に終わっても自分で納得できるよな。そんな事で創業から10年を経た1999年コンパクトなキューブ型の傘立ての開発をきっかけに自社製品開発販売事業に乗り出しました。現在では当社の収益の80%が自社製品事業によるところとなっています。

■常に新しい着眼点で

もともと自分達の得意とするところは、企画とデザインです。よく私達を知ってくれている方がideacoのユニークなところは、有りそうで無かった生活用品、その隙間を発見しカタチにしていく独創性にありますよねと評価してくださいます。そしてマーケットを理解しデザインができていますねとも言ってくださいます。飽きがこないシンプルなデザインが安心できますねなど。私自身は確かに独創性にこだわりを持って開発の成否を判断しています。そして普遍性を持っている事、シンプルである事にもこだわりがあります。製品を考える上で独創的な着眼のない二番煎じ的なものは作りたくない。今まで既に世の中にあるようなものを形を変えて美しくデザインする、それだけでは生活用品開発の後発である自分たちは専門の製造技術やノウハウ、生産設備をお持ちのメーカーさんに技術やコストで太刀打ちもできないですし、すでに溢れる程の商品を抱えておられる卸売業、小売業の方にも買ってもらえないからです。常に新しい着眼点、独創性を持って商品化にリスクを持ってチャレンジする、自分たちの商品の成功はそこにしかないと考えています。

■独創性を生むためには

独創性を生んでいけるきっかけは二つあります。一つは自分の生活の中における問題の発見、自分の生活観察です。それはまた自分以外の他人の行動や所作を観察している中に、満たされていない部分の発見という非常に感じる事を客観視した内面的な観察であります。これを自分の中のリアリティと表現しています。二つ目に自分以外の第三者にその問題を気づかせてもらえる事があります。実は私達の大ヒットアイテムゴミ箱tubelorはお得意先のバイヤー様の「現在、市場にこれといって良いゴミ箱が無いんです。羽場さん考えてもらえませんか」のひと言がきっかけで生まれたものです。それまでideacoではゴミ箱を作ろうと考えた事も計画もありませんでした。これは顧客ニーズをたまたま耳にしたことがきっかけとなったものです。スタートは問題、課題、テーマを認識するというステージです。
なぜ、あのバイヤーさんは良いゴミ箱がないと思われているのか? 今市場で長く売られているスタンダードな商品は何か? どのような容量、サイズのものが最も売れているのか? などなど。そのテーマの周辺の情報をかき集めます。そしてそのテーマに顕在化している情報を頭に詰め込んでいきます。でもその事はだれもが認識、入手できる情報でもあります。勝負はそれからです。潜在意識に透徹するぐらい意識せずともその問題を無意識に抱えておれる状態に自分を持っていきます。そうしているある時、こうすれば問題を解決できるという発想がひらめきます。でも、そのヒラメキの前には問題の本質を見抜く力が必要になります。tubelorの開発の場合、その問題は、見た目にはとても美しいゴミ箱もそれが置かれている部屋の中ではポリ袋をかぶっているという発見をしたことでした。その事はすでにだれかが認識し気づいていた事かもしれません。でもそれを満たされていない隙間として明確に認識できた事が独創性を生む事になっていきました。あとはその問題を解決するためのデザインです。この部分はまさに感性センシビリティの部分なので好きこそモノの上手なれ、才能であるかもしれません。私はデザインを発想する時、一切の外から入る情報を遮断します。なぜなら自分の想像力がそれらの情報によって振り回され創造のエネルギーを低下させてしまうからです。

■“スマートイノベーション”を掲げて

ideacoのデザインテーマは“スマートイノベーション”、生活に社会に役立てる賢い革新を生み出す事です。私達はファッション性を追求するデザイン会社でありながら古くさい側面を持っていて、朝一番にスタッフ全員の唱和から仕事が始まります。
1. スマートイノベーション世界仕様を開発 します。
2. 顧客第一、会社第二、個人第三で仕事をします。
3. 売上最大、経費極小にチャレンジします。
4. 毎日創意工夫、業務の効率化、仕事の革新に取り組みます。
5. いつも笑顔でハッピー、素直な心で向上します。
企業の業績は人なり、とよく言われますが、私達が生み出すデザインも同じで、すぐれたデザイナーは立派な理念や考え方を持っていて人格が備わっていないと、才能だけでは一時は檜舞台に立てる事があっても、それは長くは続かないと考えています。才能よりも謙虚な人柄、熱意、努力を人は評価しています。また私自身もそのようでありたいと考えています。生活や社会に役立つデザインを生み出すには、やはりかゆいところに手が届くような神経、思いやりや優しさ、ホスピタリティがなければ、それに気づく事もできないですし、独創的な発想を生み出す事はできません。

■コラボレーションの時代へ

協業という言葉が話題になってもう数年も経つと思われますが、これからはますます協業する事で互いの強みを持ち寄って新しい革新をスピーディにカタチに組み上げていく必要がある時代を迎えていると思います。私達も現在コラボレーションさせていただいている製造メーカーさんが6社ありますが、その取り組みのすべては互恵的成功報酬です。コラボレーションが必要となってきた背景には、めまぐるしく変化していく市場環境、今の立ち位置にじっとしていれば、新しい新興勢力にあっという間にそのステージが塗り替えられるような状況への対応、ビジネスはまさに2~3年で今までの価値観ではない新しい価値観に様変わりするような戦国下克上の時代にあるかのようです。クルマもハイブリット全盛かと思えばもう次にはEVへ水素自動車へ。すさまじいスピードで革新変革が進んでいきます。お互いの強みを持ち寄りタイムリーにスピーディに世界に向けて市場開発を実現させていく協業がますますこれから事業の発展、成長の新たなきっかけになっていく事と思われます。

■クリエイションとディレクション

元々は技術者の出す設計案を基にデザインを始め、機能とデザインの融合に努めたり、または事業部企画から出てきた企画コンセプトを足がかりにクリエイティブ業務に勤しんでというのが今までの姿だったのですが、私達デザイン部隊においては事例で述べてきたようにその役割の拡大からクリエイティブ能力だけでなくディレクション能力を加えた二つの能力を伸ばしていってインハウスデザイナーの重要性を社内に正しく理解してもらい、部門としての確かなベース創りと貢献を果たしていかなければならないと考えています。
また、私達は多くの外部デザイン事務所の力を借りながら膨大な量のアイテム(デザイン)を毎シーズンごとにアウトプットしていく責任も担っているため、各部員が色々なデザイン事務所とお付き合いしながらディレクションしていかなければ量をこなせない現実もあります。自分自身のクリエイティビティーを発揮しながら外部デザイン事務所もディレクションしなければならないという難しい業務をこなしていく必要があるのです。
インハウスデザイナーを育成する上でこの二つの能力をバランスよく育成するにはデザイナーの特性を見極めながらの根気のいる教育が欠かせません。二つの両方にも力を発揮できるような人材を育成する事は本当に難しいと感じています。
デザイナーには職人気質の強いヒトもいれば、ディレクション業務も上手くやれるヒトもいます。これらのデザインへの思いの違いを持つ集団の中から適性により育成の違いを的確にやらないとモチベーションの低下になりうる事もこれまでのマネジメントで体験してきています。この辺のバランスが本当に難しいし、上手くマネジメントできないとデザイン部としての能力向上が果たせません。よって、これからもいろいろと教育の仕方を工夫しながら、そのような人材育成に取り組んでいこうと思っています。

イデア株式会社 代表取締役/デザイナー 羽場 一郎
■ideacoデザイン賞受賞歴
2008 ドイツ iF design award 生活用品 部門賞 / ゴミ箱 tubelor
2007 大阪デザインセンター選定グッドデザイン商品 / ゴミ箱 dust mug
2005 日本 グッドデザイン賞 / マガジンホルダー kamui
2004 日本 グッドデザイン賞 / マルチハンガー arrow
2002 大阪デザインセンター選定グッドデザイン商品 / 優秀賞 傘立て okura
http://www.ideaco-web.com