トップインタビュー

2010.07.30

今の時代はセールスデザイン。
商品を選ぶ楽しみを感じてもらうことが大切です。

セキセイ株式会社 代表取締役社長西川 雅夫氏

商品開発の原点は“なんでやねん”

文具・事務用品でオリジナリティあふれる商品を独自に開発しているセキセイ株式会社(大阪市阿倍野区)。ポケット式カケルアルバム、縦置きファイルのシスボックス、透明ファイルほか、同社・西川雅夫代表取締役社長自らが考案するなど、多くのヒット商品を生み出してきました。そして現在も経営者として“なんでやねん”精神で商品開発力向上に尽力。その思い入れや、これからの展望などについてお話をうかがいました。

■まずは事業内容についてお聞かせください。

一般的に文具業界はオフィス関係と学童関係の2つに分けられますが、当社ではHOME(H)・OFFICE(O)・PERSONAL(P)の3つのユースに分けて、流通の販路との共存共栄を図って事業を拡大しています。HOMEとは、量販店やホームセンターで扱われている商品分野で、多くの人が日常で使うことが前提となります。OFFICEとは、会社で活用する事務商品分野ですが、10年前よりアスクルなどの通販に移行するという大きな流れがありました。そのため、価格競争により生産拠点を国内から中国など海外に移す対応を取った経緯があります。
最も注目すべきは、PERSONALです。これは、個性的なこだわりのある商品分野です。LOFTや東急ハンズなどで売り上げを伸ばしているもので、例えば、見開きにするとハート型になるアルバムは大ヒットしました。この分野の商品は価格競争ではなく、独自の意匠登録など多くのパテントを取得して展開しています。百円ショップの台頭など低価格化で厳しい環境にある文具市場ですが、高付加価値商品で新しい需要を創造しています。また、H・O・Pの境界の垣根を越えた商品づくりが、より多くの消費者が求めるヒット商品を生み出すものと考え、新製品の「預金通帳ファイル」など、ニーズとターゲットを見極めながら開発にあたっています。

■次々と新商品を開発されていますが、どのようにアイデアを生み出しているのでしょうか。

最初に「こういうものをつくろう!」というインスピレーションが大切です。そのため、常に全社員からアイデアを取り寄せています。ちなみに1アイデアにつき500円の報酬により、商品開発に対する社員の意識も高まっています。1カ月に約150件集まり、その中から週1回の会議によって選択し、優れたものを企画検討し開発部門へ進めていきます。
商品開発において力を発揮するのが、日々の生活や職場で感じる“なんでやねん”という考え方です。
「なぜ、こんな商品が出てきたのか」「なぜ、こんなに便利なのか」と、さまざまな場面で感じる疑問からヒントを得て物事を追求していく姿勢は、考える力を養い便利で役に立つ独自性の高い新しい商品やサービスを生み出します。前述のハート型アルバムもそうして生まれました。

■商品開発において一番苦労される点はどういう点でしょうか。

一番苦労するのは価格面です。どこのメーカーでも同じだと思いますが、やはり良いものを作ろうとするとコストが上がってしまいます。売るためには少なくとも、原価の3〜4倍の定価をつけなければなりません。下から積み上げた定価では売れませんので、いくらなら売れるかをマーケティングで調査しています。ここが大事な要素です。いかに調査してターゲットを把握し、相応の価格を決定するかが重要なポイントとなります。

■デザイン部門の役割などについて教えてください

当社の売り上げの7割近くが東京です。1986年に東京と大阪のダブル本社制にして、東京化への対応に力を入れてきましたが、開発部門については3年前に東京に移し、海外などの新しい情報をスピーディに活かしています。一方で、大阪に自社のデザイン会社を持ち、セキセイの仕事に加え外部のデザイン案件、例えば外食産業のメニューデザインなどにも応えています。デザイナーが外部の各会社に多く関わることによって、その業界の流行やデザインの方向性を知り、そこからまた当社の提案商品が生まれる仕組みです。

■経営者の視点で、どう「デザイン」を位置づけておられますか。

ものづくりでは、品質・価格・デザイン・機能・納期の5つの要素に分類していますが、どれも大事ですが、特にデザインは商品の魅力づくりに必要不可欠です。文具のカテゴリーの変化もあり、ターゲット層によって、その5つの要素の求めるレベルはまちまちで、好まれるデザインも違います。“グッドデザイン”という基準もありますが、今の時代は売れる“セールスデザイン”です。そのために、広くなったターゲット層をセグメントし、流行をとらえなければなりません。店頭に並ぶ商品の種類に多様化が求められてきていますが、単に色や種類を増やしていくというのではなく、お店で商品を選べる楽しみを感じてもらうこと、すなわち選ぶ快感、“選感(エラカン)”を味わってもらうことが非常に大切だと考えます。

■最後に今後のビジョンをお聞かせください。

大きな柱としては、独自の技術やアイデアで新しいファイルやアルバムづくりに力を入れていきます。一方で、先般「在線」という中国の情報検索サイト会社に出資したのですが、文具以外の新しい分野と繋がるビジネスモデルで、大阪の街づくりや産業の発展に寄与できればと思っています。人が集まれば経済効果が上がり、街が発展すればデザイン資金も大きく掛けられるようになり、その魅力がブランドになると思います。
そのためにもデザインの動向を探ることは大切です。デザインの基盤は世界の人が集まる施設や流行の先端のブランド品、ファッション系にあると思います。私自身もそういう新しいデザインの流行、形や材質、色などをこの目で見て、感性を磨いています。そして、世界の市場や経済など幅広くさまざまなことに目を向け、多くの人との出会いを通じて、時代の流れを読み取る力を蓄え、デザイン性を育てていきたいと思っています。

セキセイ株式会社 代表取締役社長
西川 雅夫氏
1948年大阪生まれ。甲南大学経営学部卒業後、大阪リコーを経て、1972年セキセイ株式会社に入り取締役、副社長を経て1985年から社長。大阪ファイル・バインダー協会会長、大阪デザインセンター評議員などを歴任。2007年著書「なんでやねん」発刊。2009年黄綬褒章受章。趣味はヨット、絵画など。