トップインタビュー

2010.10.30

「細部にまで機能性にこだわることが商品の信頼につながります」

株式会社野中製作所 代表取締役社長野中 勝彦氏

幼児のための「安心・安全なデザイン」を追求して

子供たちに夢と楽しさを感じてもらえる、安全な商品づくり。人気商品の折りたたみ式ジャングルジムからデザイン性の高い三輪車まで、創業50年の株式会社野中製作所(大阪市平野区)の野中勝彦代表取締役に、“親と子をつなぐモノづくり”における思い入れなどについて、お話をうかがいました。

■まずは子供乗り物を作るようになった経緯を教えてください。

当社は創業して半世紀になります。当初は他社の下請けで部品生産をしていましたが、事業拡大のために完成商品を作ることに方向転換を図りました。当時、ペダルを足でこぐタイプの本物志向の自動車乗り物が東京で大人気だったので、受注先の他社に声をかけ、高額な金型代をお互いに出し合って自分たちでも製造を開始しました。ちょうど第一次ベビーブームが来た時期でもあり、大変よく売れました。
子供の足こぎ自動車乗り物の単品メーカーとして、国内はもとより原油価格の上昇で経済的に豊かになってきたアラブ地域への輸出も好調でした。しかし、アジア諸国からのコピー商品の出現で売上げが落ちるようになり、国内での商品幅を広げることに力を入れました。そこで、従来の販路の西日本から新たに東京で売っていくにあたり営業を行ったのですが、なかなか商品を取り扱ってもらえない大きな壁に直面しました。ほかならぬデザインが理由でした。いくら値段が安くても、デザイン性の高い東京のものと比べるとあか抜けせず、品質まで落ちるように見られてしまったのです。早速、外部のデザイナーを起用し商品開発にあたりました。外部デザイナーを起用したのは、関西の業界では当社が初めてでした。デザイン面で他社との差別化を図り、事業をうまく拡大することができました。結果的には先行の東京メーカーのシェアを上回りました。

■現在、デザインをどう活用されているのですか。

自然に子供たちの手が商品に伸びるデザインやカラーリングは絶対条件です。そして、優れたデザインとさまざまな機能とを融合させることが、多様化するユーザーニーズに対応できるのだと思います。当社の主力商品に、簡単に折りたためるジャングルジムがあります。近年の住環境に配慮し、スペースをとらずに収納できるもので、デザインビジネスプロモーションセンターで紹介してもらった工業デザイン事務所に依頼し、強度や安全面での改良を繰り返して完成に至ったものです。その結果、他社に真似のできない新機構を付加したことがヒットにつながりました。
また、押手棒のついた三輪車も主力商品になっています。乗り物に興味を示し始める1歳前後の幼児を対象にした商品で、親が後ろから押すことで安全にコントロールできる押手棒という機能を付加したものです。どの商品でも、幼児が安全に遊べるために追求されるのは完璧な安全設計であり、その点を配慮して細部にまでこだわることが信頼につながっています。また最近では、STやSGといった安全性証明基準なども年々厳しくなっていますが、当然クリアできるように検査を受けて取得するよう努めています。

■経営者の立場としてデザインをどう捉えていますか。

東京おもちゃショー2010(東京ビッグサイド)

売価設定やキャラクターの力など、商品が売れる要因はひとつではなく複合していると思いますが、とりわけデザインは商品の売れ行きを左右するので、その重要性を大きく感じています。デザイナーは自社内にもいますし、外部にも依頼しています。外部デザイナーのメリットは、常にさまざまなモノのデザインに携わっているため常に新しい感覚を持っている点です。難しいのは、会社の考えと開発担当者・デザイナーとの考えとの調整です。会社としては、今までの経験と知識、営業や取引先からの意見が当然あります。しかし、開発・デザイン側にもこれまでの経験や自分の考えなどのこだわりがあります。毎月実施している開発会議でも、双方の意見を調整しながら開発担当者・デザイナーの創作意欲を低下させずに商品開発に導いていくかが、大きなポイントになっているような気がします。

■キャラクター商品についてお聞かせください。

子供たちに大人気のキャラクターを使用することは、販売数向上の大きな要因のひとつとなっています。中国の安価な商品にはキャラクターはついていませんし、日本ではキャラクターは大変人気が高く、祖父母からお孫さんへのプレゼントとされることも少なくありません。当社でも「キティちゃん」や「ワンワンとうーたん♪」などを使用した商品は人気があります。
ハローキティーのかんたんおりたたみジム

新しい三輪車のカタチをめざした「NEXT ONE」 しかし、あくまで基本の商品に魅力があってこそキャラクターが生きてくるので、あまりキャラクターに頼りすぎない姿勢も大切だと思います。今年7月に開催された東京おもちゃショー2010に出品した三輪車「NEXT ONE」は、やさしく包むシートや新しいデザインの押手ハンドルを採用したもので、発表して大変反響がありました。機能とデザインで勝負できる商品が開発できれば、キャラクターに依存しなくても市場では受け入れてもらえるのだと自負しています。

■最後に今後のビジョンをお聞かせください。

本社屋(大阪市平野区加美東)

年々、インターネットでの販売ウエイトは確実に増えています。自社ホームページの全面リニューアルにも取り組みました。今後はさらに商品特長をわかりやすく伝えるために動画をとり入れたり、よりユーザーニーズを把握すべく商品開発に役立つ子供モニターの調査にも着手していきたいと思っています。
少子化の時代に突入し、国内市場は商品の幅を広げるなどの対策が必要不可欠です。海外市場にも目を向け、東南アジアや当社の生産工場がある中国などに販路を拡げていくことも必要です。今後は海外、国内、ネットの3つの販売ルートをうまくリンクさせた売り方を考えていくなどして、商品アイテムをさらに増やしつつ商品開発を効率的に展開していきたいと思います。

株式会社野中製作所 代表取締役社長 野中 勝彦氏
1947年大阪生まれ。私立高校卒業後、野中製作所に入り東日本市場を開拓のため初代の東京営業所長を務め、その後、取締役を経て1998年から社長。
娃楽都児童用品(昆山)有限公司の董事長兼任。大阪ベビー&シルバー用品協同組合理事、東京都育児乗物工業協同組合理事。
趣味は近代建築物の探訪。