ケーススタディ

2010.1.30

「消しゴム」の枠を超えて

株式会社シード 企画部 商品企画課

■40年間変わらないデザイン

レーダー

「消しゴム」といえば、事務・学習用に使う、白くて四角い「スタンダード字消し」を思い浮かべられるかと思いますが、その他にも、香り付きやユニークな色・形をした学童向けの「ファンシー字消し」、本来はデッサン用の商品なのですが、色・香りをつけたことで、子どもたちに大人気の文具となった「ねりけし」、そして今ではあまり見かけなくなりましたが、ボールペン用の「砂消し」などがあります。
なかでも、当社の顔とも言える商品であるプラスチック字消し「レーダー」は、1968年の発売以来、マイルドな消し味と優れた消字性能で好評をいただいており、おなじみの青色のデザインは、たとえ社名、商品名は知らなくても、「青いケースの消しゴム」として広く親しまれるようになりました。今となっては「変わらない」というより、「変えることが出来ない」定番デザインとして、当社のブランディングに大きく寄与しています。

■変わらなければならないデザイン

一方、「ファンシー字消し」や「ねりけし」においては、いかに“ユニーク”で“変わった”商品を、ユーザーである子どもたちに向けて創り出せるかが重要となります。特に70年〜80年代にかけては、乗り物や食べ物の形をしたものをはじめ、「キン消し」の愛称で一世を風靡した「キン肉マンけしごむ」のようなフィギュア消しゴムなど、趣向を凝らした商品が次々と発売され、「消しゴム」の名の下に、学校に持っていけるコレクションアイテムとして人気を集めました。
しかし昨今では、少子化による販売数の減少をはじめ、お小遣いの使い先がテレビゲームや対戦型のコレクションカードなどに変わり、もはや形や色を変えた「消しゴム」では、子どもたちの興味を引くことが難しくなってきました。

■“過去”を“今”にアレンジ

ケシキューブ

テレビゲームで火がついた「脳トレブーム」が世間を賑わすなか、企画会議で冗談まじりに「脳トレ消しゴムって出来ないか?」といったテーマがあがりました。ただ、言葉の響きとしてはユニークではあったものの、「消しゴム」 という極めてアナログな「字を消す」文房具で、ましてやゲームや玩具のように開発にコストをかけられない現状で、どうやって消しゴムに「脳トレ」の要素を持たせるのかが問題でした。そこで浮かんだのが、過去に当社で商品化していた「パズル消しゴム」でした。凹凸の異なるパーツを組み合わせて正方形を作るという消しゴムで、改めて見直してみると、まさに「脳トレ消しゴム」。また、射出成型という製法による比較的低コストで作れることもあって、難易度別に初級、中級、上級とバリエーションを3つに増やして「ケシキューブ」として商品化することにしました。しかも、ひとつひとつのパーツには、凹凸のカドがたくさんあるので字が消しやすいという機能も。「パズル=脳トレ」「凹凸のカド=消しやすい」というメッセージの分かりやすさもあってか、発売後の評判はまずまずでした。

■“子ども”を“大人”に変身

KESHIQアニマルバランス動物園

「ケシキューブ」の商談中、ある小売店のバイヤーの方から、「パッケージをシンプルにして、大人向けに商品化してはどうか」とのアドバイスをいただきました。折しも、海外ブランドの文房具を特集する雑誌の発刊やショップでも高級文具の特設コーナーができるなど、モノにこだわる大人をターゲットにしたステーショナリー雑貨が注目されはじめており、社内でも事務用や学童向け以外に、新しいコンセプトの商品が作れないかと考えていた頃でした。そうして、小学生向けに企画した「ケシキューブ」を、デスクトップにインテリアとして飾っておける“大人の消しゴム”にアレンジして、「KESHIQ」が誕生しました。
「KESHIQ」の発売をきっかけに、セレクトショップやインテリアショップなど、従来の文具小売店とは異なった新規販売ルートの開拓もはじめ、徐々に取り扱っていただけるショップを増やしていきました。また、海外を拠点に活動されているバイヤーとの繋がりを持つことができ、少数ながらアメリカでの販売も開始。さらにMoMAのミュージアムショップでの取り扱いまで決まりました。「KESHIQ」の続編として発売した「アニマルバランス動物園」も、偶然来日していたMoMAのバイヤーの目にとまり、MoMAショップに並ぶ2作目の商品となりました。

■技術あってのデザイン

本社・本社工場

「ケシキューブ」から「KESHIQ」へ。消しゴム自体は同じ商品ながら、デザインを変えることで新しい展開が広がった今回の試みは、大変興味深いものでした。しかし、それは確かな品質の消しゴムをきちんと作るという、当社が長年培ってきた技術力があってのことだと思います。消しゴムづくりの基本をもとに、いかにデザインで味付けできるか。時に「ファンシー字消し」においては、「日本で子どもに売れる」ためのデザインが求められるゆえ、必ずしも「美しい」とか「洗練された」デザインではないかもしれません。
我々が扱っているのは「消しゴム」という小さい商品ではありますが、子どもにとって最も身近な、そして大人にとっても今なお新しい文房具であるよう、これからも様々な提案を続けていければと思います。