トップインタビュー

2009.10.30

新しいブランドの立ち上げによりさらなるマーケットに進出

ゼロワンプロダクツ株式会社

「魅力的な木の表情を引き出せるデザインを立ち止まることなく探求し続けていきます。」

「テナージュ」という日本初の天然木目材シートを世に送り出したゼロワンプロダクツ株式会社の樋口伸一代表取締役社長。木の新しい可能性にとりつかれて、商品化や意匠化に取り組んでこられました。自然素材とデザインとの新たな融合や着眼点についてお話をうかがいました。

■まずは起業された経緯などについて教えてください。

もともと化粧品会社に勤めていましたが、サラリーマンという世界が肌に合わず退職。同じ仕事をするなら自分の好きなことをしようと、昔から鞄が好きだったことを思い出したんです。そこから、自分で鞄のブランドをつくる仕事をしようと思い立ちました。
しかし、数々の一流ブランドがひしめき合っている市場の中で、個人の商品が通用するためには、どこにもない特有のモノをつくらなければなりません。そこで、「デザイン力」「素材力」「技術力」という3つの要素から考えることにしました。特に着目したのが「素材力」。デザインをする上でも素材は重要なファクターだからです。デザイナーがデザインしたくなるような、職人が技術力を活かしたくなるような、そんな素材をこの手で発掘したいと思ったのです。

■なぜ木という素材に着目されたのでしょうか。

創業間もないころジュネーブを訪れた際に、ふと木目状のアタッシュケースが目にとまりました。木をただくり抜いただけの鞄でしたが、これを研究していけば世界で一つしかない木を使った実用性のある鞄がつくれるのでは、と思い立ったのがきっかけです。
ところが当初は失敗の連続でした。木を布に縫い付けてみても木にひびが入ったり、木を布に接着剤で貼り付けてもうまくいかなかったり、鞄をつくるというよりも生地をつくるという問題に直面しました。何度も何度も試行錯誤を繰り返した末に、樹脂などを研究している大学の先生に相談し、本格的に共同研究がはじまりました。
大学の先生に手を差し伸べていただいて約2年。ついに、当社第1号の鞄誕生と同時に天然木目材シートが完成。「テナージュ」と命名したこのシートは、天然の木を薄くスライスしたツキ板に樹脂を浸透させた商品となりました。強度と柔軟性を兼ね備え、ひびが入ることなく縫製が可能な上、温度や湿度変化に影響されることもありません。2004年に日本で、2005年にはアメリカで特許を取得し、その後大手メーカーの携帯電話やノートパソコンの外観素材として採用されました。

■木目を生かすデザインとして苦心された点としてどのようなことがありましたか。

基本的に、鞄のデザインは鞄専門のデザイナーに依頼しません。専門のデザイナーに依頼すると、知識や先入観などがあるためかどうしても新しい発想のデザインが生まれにくいんです。すべてそうとはいえませんが、インテリア系など別の分野のデザイナーに依頼することによって、新しい発想のデザインが生まれてくるのではないかと。
とはいえ、鞄の主役はあくまで「テナージュ」。主役を最大限に生かすためには、デザインに個性が強すぎては駄目なんです。木目の持ち味を引き出すべく色使いが何より大切だと考えています。例えば、黄色のような明るい色は男性には少し派手すぎますが、「テナージュ」と合わせると調和し、ユニセックスにも対応できる雰囲気に変化します。
木は色との組み合わせで全く違うものへと様変わりします。そこが木目を使ったデザインの妙味であり、デザイナーの腕の発揮どころだと思います。

■この7月に「第3回 日本ものづくり大賞」を受賞されましたが。

「日本ものづくり大賞」とは、総理大臣表彰制度の一つで、日本が世界に誇るべき「ものづくり」に携わっている優秀な人材に内閣総理大臣賞等を授与する賞だそうです。ですから、最初に吉報を耳にした時はビックリしました。
このような名誉ある賞をいただけたことは今までの努力を認めてもらえたようで、とても嬉しかったです。この賞のおかげで、経済産業大臣に非常に鞄を気に入っていただけたことも印象的でした。特に海外からの来賓の方々にもプレゼントとして贈ってみたいとの賛辞もいただき、身に余る光栄でした。
こうして「ものづくり大賞」を受賞できたことで、やっと当社も一人前の企業として認められたのではないかと実感することができました。

■今後の新しい取り組みについてのお考えをお聞かせください。

現在、新しいブランドを立ち上げようとしています。
「ヴェガトウッド(VEGATWOOD)」というブランドです。当社には以前から「ヒギィ(HIGGIE)」というブランドがありました。これは男性向けでカジュアルな商品が中心だったのですが、「ヴェガトウッド」は女性向けであり、しかも高級感のある商品となっています。これは「日本のボッテガヴェネタを目指そう」という当社の掲げているテーマを具現化したものです。これにより、営業品目にも幅ができ「テナージュ」のさらなる知名度アップにも貢献するものと期待しています。
このほど、東京に支店を設立しました。社内でデザイナーを育成し最前線で活躍してもらうことになりました。デザイナー自身が会社に対する強い誇りを持って商品開発に従事してくれれば、第2の「テナージュ」や新しい第3弾のブランドを起こす日も夢ではないと信じています。

ゼロワンプロダクツ株式会社 代表取締役社長
樋口 伸一氏
1954年大阪府生まれ。化粧品会社で営業や新ブランドの企画、マーケティングを担当。1992年に独立、海外大手ブランドの化粧用具をプロデュース。1998年(有)ゼロワンプロダクツを設立。翌年、天然木を素材にしたバッグ開発の新規事業に着手し、
龍谷大学内に研究所を開設。2000年に株式会社に改組。2002年より、大阪市立大学、阪南大学の非常勤講師ならびに大阪府マネージメントスクール講師を務める。