ケーススタディ

2009.03.30

常に成長し、進化し続けるデザイン

エレコム株式会社

■変化の激しい市場だからこそ

当社はPC周辺機器をはじめ、あらゆるデジタル機器に関連する商品を提供していますが、その市場環境は驚くほどの速さで日々変化しています。
一般の家庭にPCが普及し始めたのは、つい十数年前のことです。当時は大きなCRTディスプレイのデスクトップPCが全盛で、それを置くためのPCラックが飛ぶように売れました。しかし、現在ではノートPCの出荷台数が全体の6割を超えています。ノートPCの登場によりPCラックという需要が崩壊し、代わりにノートPCを持ち運ぶためのインナーケースという需要が生まれました。
当社は常時5,000アイテムを超える商品を扱っていますが、それらが明日には無用の長物となるかもしれない脅威に常にさらされているのです。
だからこそ、私たちは市場に対する感覚を研ぎ澄ませ、お客様の声に耳を傾け、その変化の波を捉えながらも、市場の常識に縛られない新しい価値を提案し続けることで成長してきました。

■新しい価値の創出

では、どのようにして時代の変化をとらえ、新しい価値を創出してきたか。ひとつの事例として“dimpgel EX”をご紹介させて頂きます。
現在マウスの読み取り方式の主流は、ボール式から光学式になり、次世代のレーザー式も普及が進んでいます。マウスの読み取り性能の向上に伴い、マウスの操作性向上を目的とするマウスパッドは、その必要性が薄くなっていきました。当社の売上も下落傾向にあり、誰しもそれは仕方のない状況だと思っていました。
しかしデータを分析してみると、一部の付加価値を持ったマウスパッドは売上を伸ばしていたのです。
そのひとつが、マウス使用時の手首の疲労を軽減する効果のあるハンドレスト付きマウスパッドでした。マウスを長時間使用するために手が疲れるという悩みを持ったユーザーが多く存在し、その悩みはマウス本体では解消できていないのです。
当時市場にあった疲労軽減マウスパッドといえば、ウレタンゲルか低反発ウレタンを伸縮性のある生地で被ったものが一般的で、それがこの市場の常識のようになっていました。しかしユーザー視点に立って調べてみると、必ずしも全ての人がそれらの商品に満足しているわけではありませんでした。
そこで、市場の常識に縛られない、本当にユーザーが満足するような新しい疲労軽減マウスパッドを作ろう!と企画がスタートしました。
商品化にあたって、機能面を追求したのはもちろんのことですが、最もこだわったのは、いかにしてユーザーの五感に訴えるかということです。
当初は、医療機器を思わせるようなデザインにし、その機能性をストレートに伝える方法を考えていました。しかし、試作品を使った人がまず反応したのは、ハンドレスト部に使用したゲルの触感でした。このゲルは医療分野でも使われる高性能な素材なのですが、触感が赤ちゃんのほっぺのように“ぷにぷに”と柔らかく、触っているだけで癒されるような気持ちよさがあったのです。疲労軽減効果は、ある程度時間をかけて使うことでやっと実感できるものですが、五感の感覚は瞬間的に実感することができるのです。そして、店頭でお客様が商品に触れるのも一瞬のことだということを鑑み、本来の機能性はさることながら、触感や視覚からも癒され、心身ともに疲労が軽減されるような商品へ軌道修正することにしました。
デザインにあたっては、その機能性を発揮するカタチと、それを視覚的に伝えるカタチのバランスをとることに苦労しました。また、コスト面でも最後まで検討を重ねました。良い材料を使って国内で生産するとなれば、自ずとコストは上がります。形状や製造工程などの工夫をすることでコストダウンを図り、さらにユーザーがその商品にいくらの価値を見出すかを考慮した結果、一般的な疲労軽減マウスパッドの3倍という市場売価で販売することになりました。
様々な面でチャレンジ的な要素を含んでいましたが、発売後は好調に販売を伸ばし、新たな価値を創出する商品として受け入れられたと感じています。

■挑戦し続ける

当社はPC周辺機器・アクセサリーのメーカーとして成長してきましたが、最近ではAV機器部門に進出し、新しい価値を創出しています。それが、女性用ヘッドホン“EAR DROPSシリーズ”です。
AV機器はもともと男性ユーザーが多い市場でしたが、iPodの登場により女性ユーザーが大きく増加しました。しかし相変わらず市場には、音質にこだわった男性好みのデザインのヘッドホンが並んでいました。そのギャップに気づき、女性が本当に欲しいと思う商品としてデザインしたのがこの“EAR DROPSシリーズ”なのです。
もちろん、PC周辺機器の分野においても常に新しいチャレンジをしています。
PCの普及率が高まると共に、ユーザーの裾野も広がっています。機器やPCにそれほど詳しくない子供からお年寄りまで、日常的にインターネットやメールなどを使うようになっています。そのように変化したライフスタイルに調和するマウスとしてデザインしたのが、“EGG MOUSE”です。
これは、1988年に発売して市場を席捲し、当社を代表する商品となった初代“eggmouse”のリバイバルでもあります。基本的なコンセプトを継承しながらも、現代の生活に合わせて再構築することで、また新鮮さをもってユーザーに受け入れられる商品として生まれ変わりました。
当社は絶えず市場の変化を捉え、ユーザー視点にたって新しい価値を創出していくことで、日々成長し進化しています。
そのようにして、お客様をより便利に楽しくするような商品をこれからも提供し続けていきたいと思います。

エレコム株式会社 商品開発部 開発1課
佐伯 綾子氏
1997年金沢美術工芸大学卒業後、エレコム株式会社入社。
PC周辺機器・アクセサリーの企画、開発、デザインに携わる。